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第10話

 でも夜になると一人で家にいるのが嫌でまた外に出る。  出来れば名前もちゃんと覚えていない様な仲間達と馬鹿騒ぎして夜明かししたい。  けれどホントは椎名と一緒に眠りたい。この身体に残っている気持ち悪い感触を椎名を抱きしめる事で消し去りたかった。  椎名はオレの天使。神様。  椎名を抱くたびにオレは何かから許されて解放された気になっていた。  椎名がいないとオレはとっくに戻れない様な場所まで墜ちていた。 「これ……誰の血……?」  顔を見ると、服についてた血が椎名にもついて凄く綺麗だった。  オレを恐がるその瞳も、ゾクゾクしてたまらない。  綺麗な椎名がオレの手で汚れていく。オレだけの椎名になる。 「オレ、約束守ったよ。だから」  椎名、椎名。  オレの可愛い椎名。  絶対に離さないよ。 「次は椎名の番だよ」  ニコリと笑うと椎名はみるみるうちに青ざめていった。  オレはそんな椎名を血まみれの手のまま、何度も何度も抱いて椎名の中に欲を吐き出した。  オレが椎名に微笑みかけるたびに椎名は段々と強ばっていた表情を崩して、気持ちいい事に夢中になっていった。  ああ、やっと椎名がオレの中に墜ちてきた。これでもう安心だ。  真っ暗闇のクローゼットの中に椎名を閉じ込めて、オレも一緒にそこでずっと椎名を愛でながら生きていくんだ。  だけどなんでかな。何かが壊れていく音がするんだ。

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