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後日談~弟くんへのご挨拶(椎名視点)1

 三年以上付き合いのある相庭から、弟の話を聞かされることはたまにあった。 もちろんたいして広がる話題でもなく、唐突に飛び出しては消えていく、線で繋がらない点のようなものだった。  おかげで相庭と付き合い始めるまで気に留めたことはなかったが、先日隣から盗み見たSNSでのやりとりが面白くて、興味を惹かれた。 「今度相庭の家にお邪魔しに行っていい? 本当に弟くんにご挨拶したい」  部屋でくつろぎながら不意にそう告げると、相庭は驚いて目をまるくした。 「えっ、いや、いいけど、えっ」と狼狽えてしどろもどろになる恋人の肩を宥めるように優しく叩き、「簡単な挨拶でいいから」と言い加える。 うん、でも、と険しい表情で口篭る相庭に、何をそんなに悩むことがあるのかと聞けば――。 「ごめん。弟だけは俺の事情を知ってるから、紹介したら必然的にバレる。椎名が男と付き合ってるって」  なんて返答をよこされた。 「はあああ、なんでそんな心配するかな。俺は友達じゃなく、彼氏として紹介してもらおうと思ってたんだけど」 「えっ、い、いいのか?」 「いいもなにも事実だし。それに『男と付き合ってる』っていうか、『相庭と付き合ってる』んだけど」 「あ……うん。そうだね……」  ほんのりと頬に赤を散らして目を伏せる恋人にため息が出る。 可愛い。正直ものすごくそそられる表情だが、言葉の端々にまだ一線引かれている空気を感じとって、頭が痛くなった。

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