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「佐藤くん」
「なんですか」
「顔、真っ赤」
「わかってんだよこんちくしょう」
「なんだそれ?」
「口実じゃなかったんですか」
「え?」
「さっきの、クリパを断る口実じゃなかったんですか」
理人さんは、これでもかと目を丸くしてから、意地悪そうに口の端を上げた。
「ちゃんと『大好きな人とふたりきりでいたいから』って言った方がよかった?」
……な!?
「あ、クリスマスだけじゃなくて平成最後の天皇誕生日も一緒に祝うからな。来週の金曜日は2泊……あれ、3泊か?とにかく夜の数、ちゃんと数えて荷物持ってきて」
な……なんなんだ。
なんなんだよ、この人は!
「……理人さん」
「ん?」
「キスしたい」
「うん、俺も」
「えっ……?」
「コーヒーありがとう。またあとで」
「あ、はい。ありがとうございました……」
呆然と広がる視界の中で、理人さんの姿があっという間に遠ざかっていく。
ーーキスしたい。
ーーうん、俺も。
あの人、さっき自分がどんな表情 してたのか分かってーー
「ない、んだろうな……」
……ああ。
あああああ。
あああああああああ、もう!
「今日は絶対寝かせてなんかやらない……!」
fin
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