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第2話

この世の中に勝ち組負け組が存在するとしたら、モデルという職業は勝ち組だと思われることが大半だろう。 自分をどれだけ磨き上げ価値ある商品にすることが出来るか、その為には犠牲を払うことさえいとわない。 表向きは華やかで、一度軌道に乗ってしまえば一生チヤホヤされる人生が待っていると思われがちだ。 隣りで眠る俺より10個近く年下のこの男……世間ではトップモデルと呼ばれている向坂瞬(こうさかしゅん)もきっとそう思っているに違いない。 22歳という若さで大手雑誌の専属モデルを数本抱え、他にもCM出演まで果たしていて文字通りの売れっ子モデル。 だけど、実際のモデルの寿命は短く、例外もあるだろうけど何もしなくても仕事が来るのは大体25歳まで。 25歳を過ぎると仕事は徐々に減り、オーディションの話も激減する。 だから、22歳の瞬にとっては今が一番ちょうどいい年齢であって大事な時期。 そんな大事な時期だからこそ、とある理由で俺はこんな目にあっているのだ。 「おい、瞬、起きる時間だぞ。今日は8時には現場入らないとなんだからいい加減起きろ」 「うーん……おはよ」 歯切れの悪い返事をして、まだ寝惚け気味の隣りに眠る男を揺すりながらベッドサイドの時計を確認する。 「……もう6時半じゃないか。俺は風呂に入ってくるから、それまでに起きろ。お前はどうせシャワーだけだろ?」 「……えーやだよ。起きるから、風呂一緒に入ろうよ」 手を伸ばし、俺の裸体にしがみつきながらこうして駄々をこねる姿も世間的には可愛いと許されてしまうんだろう。 整ったルックスはもちろん、ほんのり茶色い髪は少し癖毛でくっきり二重と相まってかっこいいのに可愛いと、幅広い世代から人気がある。 そんなこいつに専属で管理してるマネージャーがこの俺なわけで……今朝も何度目かの同じような会話を繰り広げている。 「あーもう分かったからさっさと行くぞ」 「名波さんはやっぱ優しいなぁ」 「冗談言ってないで、ほらっ」 そしてまだ半分寝てる瞬の手を引き、ベッドを後にして二人でバスルームへ続くドアを開けた。

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