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屈辱3
それから二度ほど湯で腸内を洗われ、シャワーで全身を流された。針を打たれた胸は消毒をされた。
柔らかなタオルで裸体を拭かれて、拘束を解かれた頃には犬塚はぐったりと抵抗する力を失っていた。
改めて黒革の手枷で後ろ手に拘束されても犬塚はされるがままになっていたが………
「あっ! や、もうやめッ………ひぃ、あ!」
竜蛇の手で再びアナルにバイブを挿入されて悲鳴を上げた。
先程のアナルプラグよりも細いが長さがある。竜蛇はバイブを根元まで挿入し、ベルトで固定した。
「お腹が空いただろう」
竜蛇は小さく震える犬塚を抱き上げて、檻のある部屋へと戻った。
檻の中へ犬塚を戻し、竜蛇は再び部屋を出ていった。檻の扉は開いたままだったが、犬塚は体を横たえたまま、ぼんやりとしていた。
ひどく疲れていたし、無様な醜態を竜蛇に見られて精神的に疲弊しきっていた。
それに………犬塚は苦痛だけでなく快楽を感じていた事にショックを受けていた。
自分は変わった。性玩具だった子供の頃とは違う。
抜け出せたと思っていたのに………
ブランカに会いたかった。あの静かで冷たい瞳が恋しかった。
「お待たせ」
竜蛇がトレイを持って戻ってきた。
いい匂いがして置かれたトレイを見ると、湯気をたてている温かいスープだった。
「優しいものから食べた方がいい」
犬塚に対してあれだけ無茶苦茶をしておいて、竜蛇は気遣うように犬塚の黒髪を撫でている。
「………手」
「ん?」
「これ、外せよ」
「駄目だ。そのまま食べろ」
犬塚は手枷を外すよう言ったが、竜蛇はあっさりと却下した。
さっきまでスカトロプレイを強要されていたのだ。竜蛇が命じる事に今さら驚かないが、従うのは癪にさわる。
だが逃げる為には、これ以上体力を失うのは不利だ。
「………」
犬塚はのそりと体を起こして、拘束されたまま犬のようにスープに口をつけた。煮込んだ野菜の旨味に腹が減っていたのだと気付かされる。
幼い頃もこうして犬のように食事をしていた。与えられていたのはペースト状のエサだ。栄養価は高いが冷たくて不味かった。
そんな事を考えながらぴちゃぴちゃとスープを飲む犬塚を竜蛇は愛しげに見つめていた。
「いい子だ」
皿を空にした犬塚を誉めて、トレイを下げた。それから、竜蛇は犬塚の頭を引き寄せた。
「………んっ」
汚れた口回りを舌で舐めて綺麗にし、そのまま口付ける。優しく唇を合わせて互いの舌を絡ませ合い接吻を堪能し、ゆっくりと唇を離した。
この場にそぐわない甘すぎる口付けに犬塚は甘い吐息をこぼした。
「今日はもう終わりだ。ゆっくりお休み」
「………」
犬塚は手枷を外せとも、バイブを抜けとも言わなかった。
言っても無駄だからだ。自分は竜蛇の支配下にある。
犬塚は竜蛇に背を向けて、ごろりと寝転んだ。
「お休み。犬塚」
最後にもう一度、犬塚の黒髪を撫でてから檻を閉めて、竜蛇は部屋を出ていった。
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