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角砂糖は3つまで

望月さんに俺の想いを伝えることしか頭になくて、その後のことをまったく考えてなかった。 今思えばどうするつもりだったんだろうと不思議なぐらいだ。 だから、その場で返事を貰えるとも、ましてやオッケーを貰えるとも思ってなくて。 「お前、顔ヤバイ」 望月さんは俺の顔を見て笑ったら、急にぶわっと全身に熱が広がった。 「え、あの、俺の好きって、ラブ的なやつでして…」 「俺もそういう意味で好きって言ったんだけど」 「え、あ、そうなんだ……望月さん男でもいける人?」 さっきから汗が止まらなくてヤバイ。 現実を受け止めた次は、どういう顔をすればいいかわからなくてしどろもどろになって、まったく的外れな質問をしてしまった。 「俺はバイだよ。それよりお前の方だろ?」 そう言って、望月さんは流れるような手つきで俺の頰を撫でた。 「っ!」 「俺と付き合うってこういうことだけど、わかってんの?」 望月さんの長くてしなやかな指は、頰を撫でたあと首筋を通り、そのまま鎖骨、胸、腹となぞる。 腰が甘く痺れて、怪しく光る望月さんの瞳から目が離せない。 「望月さんなら……いい……」 情けないことに俺の声は震えてしまった。 こんな一世一代の告白なんて初めてで、感情的になりすぎて涙出そう。 ていうか、なんでこういう状況になったんだっけ? そうだ、俺が望月さんに告白したんだ。 あれ、でもどうして望月さんの部屋なんだ? 意味のない自問を繰り返していないと、緊張と恥ずかしさでどうにかなりそう。 「なあ、今何考えてんの?」 「いや…なんでこうなったんだっけなと、思って」 「へえ…お前、けっこう余裕あんのな」 「余裕ないから…現実逃避…」 「逃げられると思ってる?」 「むり……」 だって、俺の心臓これまでにないぐらいうるさい。 近づいてくる望月さんの視線から目が離せない。心臓うるさいし、体は熱いし、もうドキドキってレベルじゃない。 人を本気で好きになるって、こういうことなんだ。 望月さんの手で瞳を隠されて、唇にほんのり吐息を感じたあと、キスをされた。 「んっ!」 固く閉じた唇を、望月さんの舌がつんつんと突く。 開ってか、口を…! 薄く目を開けたら熱を孕んだ望月さんの瞳が視界いっぱいに映って。 ああ、本当に俺のこと好きなんだって思った。 ゆっくり口を開けたら遠慮なく望月さんの舌が入り込んできて、初めてキスするのに俺が気持ちよく感じるところを全部知ってるかのように蹂躙される。 「んぅ…もち、づ…ふぁ…」 最後に俺の舌を吸いながら顔が離れた。 望月さんを見ると眉間にシワが寄ってて、何かまずったなかと不安になる。 「お前、コーヒーに角砂糖いくつ入れた?」 「え?たぶん、む、むっつ…」 「はあ?」 「使いすぎてごめんなさい!」 「キス甘すぎるから、お前、次から3つまでな」 俺の声が発せられると同時にまた唇を塞がれた。 たしかに、ちょっと、甘いかもしれない。 でも、甘くて幸せだ。 このことは、望月さんには秘密にしておこう。

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