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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」64※
「な、…っな、智也、目隠し、外せって」
早々に白旗をあげた。
智也はおっとりと顔を腹から離し
「どうして?」
……くっそ馬鹿、とぼけんなっ
「目隠し、やだっつってんの」
「でもこれは、お仕置きだよ?……ああ……そうか。感じすぎて、怖い?」
「っ、怖いとか言ってねえもん」
「じゃあ、もうちょっと我慢してて」
智也が自分の身体から身を起こして離れる気配に、祥悟はホッとした。あのまま乳首なんか舐められたら、恥ずかしい声が出る。そういう時の自分の声を、智也は可愛いと言ってくれるが、自分では全然そうは思えない。みっともなくて浅ましい。
そもそも、自分の声自体がコンプレックスのひとつなのだ。智也のような落ち着いた柔らかくて低めの声に憧れていた。
「な、智也、どこさ?」
「ああ、ごめんね、お待たせ」
ギシッとベッドが軋む。智也が近づいてくる気配がして、祥悟はシーツに足を突っ張らせながら、少し上にずり上がった。頭の後ろには、ふかふかの大きな枕を2枚重ねてある。乱れて暴れた拍子に柵に頭をぶつけないようにだろう。
「っあ、」
油断していたところに、不意打ちできた。
乳首を何かでさわさわと撫でられたのだ。この感触は……指じゃない。タオル?シーツ?いや、もっと何か細かい……
再びその何かが乳首をさわさわと擦る。
髪の毛?
絶妙なくすぐり加減で撫でられて、祥悟はもじもじと身を捩った。
「っなに、それやめ…っ」
「気持ちいい?」
「くすぐった…、んぁっ」
少し強めに下から粒を撫であげられて、言葉がそのままエロい喘ぎに変わった。
「あ。ここか。ここがいいんだね、祥」
「っ、ちが、…っぁっ、」
クリクリとそれを回転させながら、弱い部分を更に嬲ってくる。祥悟は胸を波打たせながら唇を引き結んだ。それが離れる。ホッとする間もなく、もう一方の乳首に同じ感触が襲ってきた。見えないから身構えることが出来ない。
「も、やめ、…っなに、それ」
「ふふ。筆だよ。上質な毛を使ってるからね。柔らかくて気持ちいいだろう?」
……筆?……って、習字で使うあの?
祥悟は見えない目を智也の声がする方に向けた。
「もっと細いのとか、毛が硬いのとか、いろいろ揃えてみたんだよ」
のほほんと楽しげな智也の声に、祥悟は内心悪態をついた。
……んなもん揃えなくていいし!
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