110 / 175

バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」64※

「な、…っな、智也、目隠し、外せって」 早々に白旗をあげた。 智也はおっとりと顔を腹から離し 「どうして?」 ……くっそ馬鹿、とぼけんなっ 「目隠し、やだっつってんの」 「でもこれは、お仕置きだよ?……ああ……そうか。感じすぎて、怖い?」 「っ、怖いとか言ってねえもん」 「じゃあ、もうちょっと我慢してて」 智也が自分の身体から身を起こして離れる気配に、祥悟はホッとした。あのまま乳首なんか舐められたら、恥ずかしい声が出る。そういう時の自分の声を、智也は可愛いと言ってくれるが、自分では全然そうは思えない。みっともなくて浅ましい。 そもそも、自分の声自体がコンプレックスのひとつなのだ。智也のような落ち着いた柔らかくて低めの声に憧れていた。 「な、智也、どこさ?」 「ああ、ごめんね、お待たせ」 ギシッとベッドが軋む。智也が近づいてくる気配がして、祥悟はシーツに足を突っ張らせながら、少し上にずり上がった。頭の後ろには、ふかふかの大きな枕を2枚重ねてある。乱れて暴れた拍子に柵に頭をぶつけないようにだろう。 「っあ、」 油断していたところに、不意打ちできた。 乳首を何かでさわさわと撫でられたのだ。この感触は……指じゃない。タオル?シーツ?いや、もっと何か細かい…… 再びその何かが乳首をさわさわと擦る。 髪の毛? 絶妙なくすぐり加減で撫でられて、祥悟はもじもじと身を捩った。 「っなに、それやめ…っ」 「気持ちいい?」 「くすぐった…、んぁっ」 少し強めに下から粒を撫であげられて、言葉がそのままエロい喘ぎに変わった。 「あ。ここか。ここがいいんだね、祥」 「っ、ちが、…っぁっ、」 クリクリとそれを回転させながら、弱い部分を更に嬲ってくる。祥悟は胸を波打たせながら唇を引き結んだ。それが離れる。ホッとする間もなく、もう一方の乳首に同じ感触が襲ってきた。見えないから身構えることが出来ない。 「も、やめ、…っなに、それ」 「ふふ。筆だよ。上質な毛を使ってるからね。柔らかくて気持ちいいだろう?」 ……筆?……って、習字で使うあの? 祥悟は見えない目を智也の声がする方に向けた。 「もっと細いのとか、毛が硬いのとか、いろいろ揃えてみたんだよ」 のほほんと楽しげな智也の声に、祥悟は内心悪態をついた。 ……んなもん揃えなくていいし!

ともだちにシェアしよう!