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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」66※
経験のない刺激に、翻弄されていた。見えていないから余計に感度が鋭敏になる。
愛液を吸い取った筆が、柔らかい毛先を細めて、亀頭部分を這い回る。
乳首の時とは全然違う感触が襲ってくる。
無理だ。気持ちいいけどもう嫌だ。
智也の体温を感じたい。
無機質なもので、ただひたすら性感を高められるのは、もう嫌だ。
「も、やめろって!……っぁあ、んぁ、」
小さな鈴口に毛先が忍び込む。放出とは真逆の、本来入れる場所じゃない部分に異物が侵入する感覚が怖い。
快感は増していたが、同時に寒気がする。
祥悟はかかとでシーツを蹴って、大きく身を捩った。
「も、やだやめてよ、智也、ぁっ、ん、やだぁ…っ」
智也が筆の動きをぴたっと止めた。ベッドが軋んで、顔の方に覆いかぶさってくる気配がする。
「祥?大丈夫?」
……大丈夫、じゃ、ねーし。
「え……ちょっと、待って」
少し焦ったような声と共に、ゴソゴソと智也が動いて目隠しを外された。
急に視界が明るくなって、眩しさに目をきゅっと細める。
「あ……うわ、ごめん、祥。君、」
智也の上擦った声に薄目を開けると、世にもせつなそうな顔をした男前が見えた。指が伸びてきて、目元をそっと拭ってくる。
「ご、ごめんね、そんなに辛かったのか。可愛い声出てたし、勃ってるから気持ちいいんだとばかり…」
気持ちよかったのは確かだ。いつもより感じ方も激しかった。
でも……怖かったのだ。未知の感覚かどんどん膨らんでいくようで、生身の智也が何処か遠くにいるようで、すごく怖かった。
「智也の……馬鹿」
「っ。ごめん」
「それ、やだ。おまえの指がいい。おまえの、ぬくもり感じられるもんで、弄ってよ…っ」
思わずみっともなくしゃくり上げてしまって、ふうぅっく、と唇を引き結ぶ。
智也は慌てて手を拘束していたシリコンのバンドを外した。両手が解き放たれてホッとする間もなく、智也の腕で抱き起こされて、キツく抱き締められた。
「ごめん、祥。辛くして、ごめんね」
「辛いとかじゃ、ねーし。痛くもなかったし。けど、おまえがしてくれてる感じじゃなくてさ、おまえの体温とか感じねーし、そういうの、やだ」
「祥……」
「俺は、おまえだから、気持ちいいんじゃん。おまえにされるから、安心出来るんじゃん。……智也の、馬鹿っ」
智也の体温に包まれてホッとした反動で、感情が昂ってきて、言葉が止まらない。ボロボロと涙まで止まらない。
「ごめん。ごめんね、祥」
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