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「吐息のようにKissしてよ」10(最終話)

うっとりするような優しい甘いキスに、不安で強ばってしまった心が、ほどけていく。重なる祥悟の吐息はとろりと甘くて柔らかい。智也は祥悟をぐいっと引き寄せ抱き締めて、その甘さをもっと深く堪能した。 「ん……っふ、んぅ……っ」 鼻から漏れる彼の低い喘ぎが、耳から忍び込んで官能を煽る。 ああ……。堪らない。 祥悟がくれた幸せ過ぎる言葉が、頭の中で何度もリフレインする。 不安で心が揺れていたから、彼のストレートな言葉は、ずしんっと心に響くほど嬉しかった。 彼を信じてない訳じゃないのに、大切に思えば思うほど、些細なことで自信をなくしてしまう。 でも、祥悟は真っ直ぐに言ってくれたのだ。おまえをちゃんと見てるから、と。 なんて力強い言葉だろう。 彼を愛し続けることに、自分はもっと自信を持っていいのだ。 祥悟を一番幸せに出来るのは、自分だけなのだから。 繰り返すキスで2人の吐息が乱れる。 口づけを解くと、祥悟はくくく…っと喉を鳴らして忍び笑いして 「で。どうすんの?」 「……え……何が?」 祥悟の緑がかった瞳が悪戯っぽく煌めいた。 「おまえ、忘れてんだろ?ここが、何処だか」 「……あ」 智也はハッと我に返った。 そうだ……ここは、ホテルの展望ルームで。 まばらだが、他にも人がいた。 そして、自分たちのこの状況は……。 「うわぁ……」 「気づくの遅いんだよね」 仕切りなど何もない展望ルームの一番目立つ場所で、窓にもたれて、ストールで頭だけ隠して抱き合ってる不審な男が2人。 この状況は……ものすごく、まずい。 周りの視線は、祥悟のストールが遮ってくれている。でも感じる、周りのざわめき。 「どうしよう。警備員……呼ばれてしまうよ」 「ま、そうかもな」 祥悟は楽しそうだ。 ……これはもう、覚悟を決めて……。 何でもない顔をして、ストールを外して、普通に立ち去るしかない。 ちょっと……いや、かなり気恥しい状況だが、祥悟を疑ったこれは罰だ。 「……祥。行くよ?」 「OK。ギャラリーがいるならさ、見せつけてやってもいいけど?」 祥悟は口の端をきゅっとあげて、不敵な笑みを浮かべた。 ……まあ、いいや。君が楽しそうなら。 智也は内心、ため息をつくと、頭をすっぽり覆っていたストールを、思い切ってするりと外した。 「くくく…。やっぱ目立ってたっぽい。みんなあほ面して見てるし」 祥悟の言葉に恐る恐る振り返ると、さっきより増えた他の客たちが、微妙な表情を浮かべて遠巻きにこちらを見ていた。 智也は頬にぐっと力を入れて、ポーカーフェイスを作ると、祥悟の手を握って歩き始めた。 「あーぁ。みんな、すげえ顔してんだもん」 颯爽と展望ルームから出て、エレベーターに乗り込むと、祥悟が腹を抱えて大きな声で笑い出した。 ……まったくもう……。 智也は祥悟の手を掴んでグイッと引き寄せると 「仕切り直しだよ、祥。俺たちのBirthdayディナーを、優雅に楽しもうか」 「んー」 頷く祥悟に智也は微笑んで、優しくキスを落とした。 ーおまけENDー ということで、完結です。 すれ違いシリアスからの、ロマンティック馬鹿っぷる。 智也&祥悟。お誕生日おめでとう。 末永く幸せにね。 月うさぎ

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