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第5話

猫族は猫の王こそいるが国らしい国というものは無い。そもそも元来が自由な気質だ。他種族と接するよりはやはり同種族で集まる方が気は楽であるので、なんとなく猫族で集まっている集落もなくもないが、取り立てて猫族の繁栄だとかいうものには興味が無い。群れをなせば自ずとボス、王ができもするが別に世襲制で血をつなげようと言うこともない。それどころかいたはずの王が、いつのまにかいなくなっていたりする事すらある。いた気がするけど誰だっけ?となることもある。その中で現猫王、アレキサンドライトは在位五年という最長記録を保っており、後にも先にもきっと彼だけの偉業だろうと猫族からも他種族からも言われている。 猫族というのは他種族から見ても愛らしい容姿をしており、基本的に愛嬌だけで世を渡っている節がある。最たるものは、猫王がいる最も大きい猫族の集落まるごと犬族に面倒見てもらっている所だろう。もちろん何の見返りも無しではない。猫族の生活能力がなさすぎて、見返りというほどあてにされているかは疑問だが、猫族は他種族に比べて魔力が強い。世界には多くの強力な魔術師がいるが、その中で一歩も二歩も抜きん出ているのが猫族である。犬族は戦士として騎士としては頼りになるが、魔術だけは猫族にまるで及ばない、そこを猫族が補っているということになっている。 生活能力が無いと言ったが、猫族は魔力の他にも身体能力も優れているし、魔術に優れているということは頭も良い種族である。本来は。 生きるだけなら全然問題無くできるのだ、ただ生活はできない。そういう種族であるので、犬族のような面倒見の良いしっかりした相手が必要だ。そうでないと混沌としてしまう。貞操観念すら欠如しているので近親相姦にもまるで抵抗が無いし夫婦といった概念もない。もし猫族に本気で恋をしてしまおうものなら、猫族をつかまえて監禁しないとダメだなどと真しやかに言われる程だ。 だからこそトパーズは父親を雌にできたし、その日の内に王宮魔術師という仕事を辞めさせて軟禁しているのだが。 ただし猫族を監禁している相手は、ゆめゆめ忘れてはいけない事がある。猫族は魔術に優れ、頭も良く、身体能力も申し分ない。猫族を監禁できているのは、猫族が監禁されてもいいと思える程、相手に好意を抱いているからだ。それを忘れてまるで主人と奴隷のような関係を強いたり、雑な扱いをしようものなら即猫族は相手の前から消えるだろう。そして二度と会えないどころか、場合によっては他の猫族すらも見ることが叶わなくなるのだ。 スピネルは世界でも有数の魔術師だが、息子に犯され雌になり、己の雄たる息子トパーズと絶賛二人ぼっち生活を満喫している。が、本日は雄の許可をもらって珍しく外出をしていた。 外出先は元上司、猫王アレキサンドライトの私室である(ちなみに猫王の城は犬王の城の一角にあるっていうか正直犬王のお城に居候しているといった方が正しい)。随分と前に息子の雌になったからお仕事やめます☆みたいな酷い辞め方をしてはいたのだけれど、猫王は特に気にせず久しぶりにお茶しない?などとのんきな連絡をよこしてきたのだ。スピネルとアレキサンドライトは主従関係もあったが親友でもあった。入念にアレキサンドライトとはどういう関係か、アレキサンドライトとはどういう猫族かを体に聞かれスピネルは三日ほど眠れなかったが、その甲斐もありアレキサンドライト以外には会わないという条件での外出であった。それでは行ってきますとスピネルが家の扉を開くとそこはアレキサンドライトの部屋である。事前にお茶会ができる条件を伝えてもあったので、お茶の用意もお茶菓子の用意もすでにされ、アレキサンドライトが待ち構えている状態であった。 アレキサンドライトは真っ白な長毛種で蒼と碧の瞳をした美しい猫である。スピネルも愛らしい短毛の黒猫であるので、スピネルが王宮魔術師であった頃、二人がたまにでも揃った時などは意味もなく犬族の衛兵等が頻繁かつ大量に警護に来ていた。 「それにしても愛されてるね」 スピネルの近況を聞いたアレキサンドライトが、羨ましそうにため息をつきながらお茶を飲んだ。アレキサンドライトの言葉にスピネルが嬉しそうな顔をし、そのあと小さく喘いだ。獣人は基本的に裸で衣服を纏わない。だが今日のスピネルは、明らかにおむつと言っていい白い布を腰に巻いていた。いつぞやスピネルを犯したスライムが、またスピネルを犯している状態なのだ。 「ザンだって犬王がいるだろ?」 ザンとは、アレキサンドライトの愛称である。ひんひんと、スライムに甘イキしながらスピネルはアレキサンドライト、ザンに返すが、ザンは難しい顔をしてカップをテーブルに置いた。 「あの方は真面目な方だからね、ザンが王様をしている間はもしかしてなにもしてこないかもしれない」 現犬王がザンにベタ惚れなのは、誰もが知っている事だ。もしかしたら、犬王は隠しているつもりなのかもしれないが、誰が見ても犬王はザンを好いている。ザンも、あれこれと世話をしてくれる犬王に好意はあるのだが、二人は長い間友人以上の進展が無かった。 「ザンが王様をしている間っていつまでだい?」 「わかんない」 前猫王がいつの間にかいなくなっていた、では新しい王をとなった時にザンが選ばれた理由はザンが当時の候補の中で最も強かったというわけでは無い。ザンには猫族でもトップの実力を持つスピネルがいて、犬族でも最も恐れられていた現犬王がいたからだ。スピネルが王に選ばれても良かったのだが、猫族の最も友好的かつ強力な同盟(という事にはなっている)相手である犬族の保護があるというのが強かった。あと、ザンも含めて候補が全員、王という地位にあまり興味を持っていなかったのもあって、なんとなくザンが王になり、それがそのまま続いている。 「ザンと犬王の話はいいよ。それよりスピネルの話が聞きたい、えっちなの?毎日えっちなの?」 「すっごいえっちだよ!今だってスライムにえっちなことされて大変!」 「いいなぁ、えっちでいいなぁ」 「毎朝寝相がえろいってお仕置きされるんだ、毎朝だよ!スピネルの寝相ってそんなにえろかったっけ?」 腹の中のスライムにハアハアと喘ぐスピネルの質問に、ザンは覚えている限りの回想をしたが特にスピネルをえろいと思った事が無い。 「そうでも無いと思うんだけど。しょっちゅう仰向けでがに股に万歳してる寝相だった事は覚えてるけど」 「それはザンも同じだったよ。......なんでスピネル達すぐ万歳してしまうんだろうね......」 「寝るのが楽しいからだろうか」 「それだ!」 「そうか!」 最初の質問と全然違う着地点だが、お互い気にした様子が無い。ひんっとまたスピネルが啼いた。 「スライム?」 「......前のスリットに入ってきたぁ♥️おちんぽ♥️おまんこといっしょにめすおちんぽまでいじめられてるぅ♥️」 「......えっちだ......」 いいなぁと、ザンが羨ましそうに悶えるスピネルを見やり、色とりどりのマカロンタワーから一つつまんで口に入れた。スピネルの開きっぱなしの口にも、マカロンを入れてあげる。 「ふむあぁんっ♥️んっ♥️んぅん♥️......っん、この間は犯された後玄関に飾られそうになったりもあったよ」 なんとかスライムに耐えているスピネルが、近況報告を続けると、ザンが驚いたような顔をした。 「え、飾られなかったの?」 「飾ってしまうとセックスできないって気がついて無しになったんだ」 「頭いいね!犯された姿を飾るなんて素敵でされてみたいけど、そっかー、確かになにもできなくなるか」 「トパーズは強くて賢い子なんだよ」 ふふんとスライムに犯されているスピネルが、震えながらも胸を張り、そのままそういえばと自分の胸に両手を添えた。 「おっぱいみるくが飲みたいって言われて出してあげたりもしたなぁ」 「わぁお、強くて賢くておまけにかわいいなんて最強すぎないかい?」 「ザンもそう思う?スピネルももう毎日トパーズにそう思っているんだよ!」 興奮気味にスピネルが、トパーズがどれだけ素敵な息子か語ろうとしたが、そのまま悲鳴を上げてテーブルに伏し悶えて何も言えなくなってしまった。ザンの耳にもおむつの中のぐちょぐちょとした音が聞こえてくる。スライムが帰宅を急かしているようにもザンには思えた。 「もう帰る時間?」 来たばっかりなのにと、ザンが残念そうにスピネルに聞いた。 「まら♥️もうちょっといたい♥️」 「いいの?」 だいぶ気持ち良さそうなスピネルの様子を見て、早く帰ってセックスしたくないのだろうかと、ザンが首をかしげた。 「とぱーじゅのいないとこれイッたらおしおきっていわれてるのぉ♥️」 なるほど、スピネルの言葉にザンが納得したようにうなずいた。 「それはたくさんメスイキしてお仕置きしてもらわないとだ!」 「でしょう?♥️♥️♥️」 このお茶会から数日後、ザンはふらりといなくなってしまった。新しい猫王を立てたいが候補はいないかという犬王の手紙から、友人のメスの匂いを嗅ぎとって、スピネルがお幸せにとため息をつくのは別の話。 「で?俺は俺のいないとこでイッたらお仕置きっていいましたよね?おとうさん?」 日が暮れるまで帰らなかった父を待ちくたびれてすっかり拗ねたトパーズが、仁王立ちで待っていた。 未だに自分の尻を犯すスライムはそのままに、ぐっしょり濡れたおむつも変えず床に正座してお仕置きを楽しそうに待っている猫魔術師おとうさんは今日も今日とてお尻が雑魚のようである。

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