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episode3-18
「……あ、京、ちょっとこっち向いて。」
「んぁ?なんだよ。」
「っと…、ん、取れた。」
侑稀はなんでもない顔で俺の口の端を親指で拭ってそう言った。
「………あー、お前、ほんとにずるい。」
「はぁ?取ってやったのにずるいってどーゆーことだよ。」
「…そーゆーこと他の奴には絶対にすんなよ、まじで。」
女にも男にもすんなよ、と俺が言うと
侑稀は意味がわかっていないらしく、不思議そうな顔をしていた。
「……なんでしたらだめか、教えてやろっか。」
「いや、別にいい。」
「教えてやるって。」
横並びに座ってた侑稀とぐっと距離を詰めて
鼻と鼻が付くくらい近づいてから5秒。
驚いているのか困っているのかわからない表情で
侑稀は目も閉じずに俺の目を見つめていた。
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