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【問1】(2)
教え子で、もちろん未成年。
頭の中に犯罪の二文字が浮かぶと同時に、自分でもちょっとどうかと思うほどでかい溜め息が漏れた。
小鳥遊は男だが、同性とか異性とか以前の問題だ。教師と生徒が恋愛関係になったら立派な犯罪なのだ。
「……毛も生え揃ってないガキが何言ってんだ」
こいつ自身のためにも、この告白は笑って流して、冗談として処理するべきだろう。
そんな思いから、わざと下世話な言い回しをして軽薄に笑ってみせるが、小鳥遊はまだ幼さの残る唇を尖らせ、
「じゃあ、もっとチン毛モジャモジャになったらやらせてくれますか?」
と、下世話さで俺を遥かに凌ぐ切り返しをしてきた。
「そういう問題じゃない。第一、こんなオッサンの何がいいんだよ」
「オッサンじゃないです! ていうかせんせい、まだ二十八でしょ」
「お前とひとまわりも離れてんだぞ。来月になったら十三歳差だ。お前は良くても俺が捕まるんだよ」
「そうだ、来月誕生日ですよね! 八日ですよね! 何か欲しいものあります?」
「話を聞け」
若さ故の勢いか、はたまた年上への憧れのようなものか。
同い年の女子たちと毎日同じ空間で過ごす、俺からすればもはや羨ましい、高校というこの環境。そこに身を置きながら、よりにもよって教師で同性の俺を好きだという。
元々ゲイなのだろうか。
性の多様化、個の価値観の尊重が叫ばれる昨今だ。俺だって無論、いち生徒の性的嗜好を否定するつもりは毛頭ない。
ただ、それを向けられたところで、ストレートである俺には応えられないし、ましてや淫行条例違反で手錠をかけられるような道には、間違っても進みたくない、それだけだ。
こいつは割と顔が整っているし、社交的な性格だ。女子からモテそうなものだが、恋愛対象が男だけだというのであれば、それなりの悩みや葛藤もあるだろう。
さっきからセックスだチン毛だ何だと宣うその顔からは、そういう繊細さは微塵も感じられないが、きっと本当はそうなのだろう。そうに違いない。そうであってくれ。
男として小鳥遊の気持ちに応えることはできないが、教師としてそういう苦悩を受け止めてやることならできる。
と、心なしか痛み出した頭でそこまで考えたところで、俺は視線をはっきりと小鳥遊に合わせた。
悩みなら聞くぞ、というようなことを言おうとして、だ。唇を開いたのもそのためだ。
決して小鳥遊の舌を迎え入れるためじゃなかった。
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