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砂漠の夢(暴力)
会社で緑地化の研究で砂漠に現地調査来ていた時にキャラバンが盗賊の襲撃に遭い、もう数年が過ぎていた。
「んっ…んひっ!!」
男でありながら性処理の為に改造された体は、毎日かわるがわる知らない男達の相手を俺が精魂尽きるまでさせられる。
「はぁ」
夜、与えられた監獄の様な自室に戻る俺は直ぐに固い寝藁に身体を沈める。
寝藁に時折触れる弄ばれ続けた乳首は、歪に引き伸ばされ腫れていたが感覚が鈍くなっていたので痛みなどは薄かった。
家畜の暮らしに疲れた身体を伸ばし、息を吐いた。
目を瞑り、一瞬。
「○×△△○××~!!」
「弓井 くん逃げなさい!」
遠くから様々な声と音が迫って来る。
妙齢の教授が叫ぶ声に俺は急いで踵を返す。
しかし、慌てた教授の向こうから黒服の集団がすごい勢いでらくだに乗って近付いてくるのが見えた。
その集団は真っ黒なターバンに、口許も黒い布で隠れており尚更恐怖を感じる。
「……っ」
刹那な時間にもキャラバンが襲われた時の悪夢にうなされる。
あの後、同じキャラバンに居た若い男以外は全てその場で盗賊の手で殺され、着ている服も金品も全て剥ぎ取られた。
生き残った俺たちも、すぐに頭に麻布袋を被せられ引きずられるようにアジトに連れて来られる。
そして、すぐに連れてこられた人間は少ない金銭でやり取りされ、労働力や性奴隷として取引された。
「…ぁ」
次に目を開いた時には、もう夜は明けていた。
あの一瞬の瞬きに時間が経っていたのだろう。
男達の性処理という労働で限界まで溜まった疲労は微かな睡眠では抜けることはなく、もう身体的にも精神的にも限界は近づいていた。
そんな俺は、ただただ疲れていたのだ。
どうせこのまま死ぬのならばと見張りが無用心に閉め忘れた外界への扉へ走った。
そもそもここから逃げても異国の地では頼る宛などなく結果は見えていたのに小さな希望を胸に最後の力を振り絞って駆けた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
しかし、俺は呆気なく捕まった。
脱走した俺に待ち受けていたのは酷い折檻だった。
「ご…め、んさぃ…ゆるして…」
言葉にしたくもない見せしめの拷問。
長い宴が終わり、血塗れの俺を床に引き倒し蹴りながら男達は笑う。
皮膚が裂けるまで鞭打たれた身体を引き摺り、私室に戻り固い寝藁に身体を沈める。
一瞬。
目を開いた時にはもう、夜は明けていた。
私室に笑いながら入ってきた男。
「ぐすっ…ぐずっ」
鼻をすすり、縛られた腕では涙も拭えず、肩を蠢かし二の腕で涙を拭く。
涙を拭う際、折檻で裂けた皮膚が私の頬を赤く汚し、ますます俺は惨めな姿になった。
「……っっっ!!」
脱走の罰だと睾丸に電流を流され、意識が遠退くが直ぐ様に腹を殴られ覚醒し電気で痙攣する睾丸に注射を射たれた。
現地の言葉で嘲笑う男が俺の陰毛を引っ張り一本一本を乱暴に引き抜き遊ぶ。
刺すような痛みと薬による高陽感、 どんなに泣き叫んでも男は俺を虐待し俺はそれをただ受け入れることしかできない。
+
あれからどれほど月日が経っただろう。
俺はただ冷たい天井を見ていた。
「う"う"う"」
尻に埋め込まれた電極が規則的に電流を流し、規則的に俺の快楽を誘発する。
天井からの人工的な光が眩しく、伸ばそうとした腕は二の腕から先が無かった。
ああ、そうだ。
俺の手足はもう、無かったのだ。
「ん"ん"ん"ん"」
脳に埋め込まれた電極が俺の意思を奪い、ただ男達の加虐的な趣味のためだけに生命を維持されていた。
毎日栄養剤と興奮剤を射たれ、もう疲れすら感じない。
懐かしい夢を見た。
「あはは…えへへ」
日本に居た時の他愛もない記憶。
気まぐれに流される電流に脳を揺すられ、俺は笑いながら弄ばれていた。
明日はどんな楽しい夢が見れるだろうか。
更にどれだけの月日が経ったのだろう。
しかし、それは俺にはもうどうでも良かった。
与えられた柔い毛布の中、昔を思い出して俺は泣いた。
盗賊に捕まり家畜にされる前の穏やかな日常を。
「…………」
誰かが俺を呼んだ。
父だろうか。
母だろうか。
いや、違う…彼だ。
ああ、そうだった。
ようやく盗賊のアジトを突き止めた政府に保護され、私と同じく緑化の研究でこの国に来ていた今の里親の元に面倒を見てもらっている。
あの地獄から解放されても、全てが遅すぎた。
毎日射たれた薬のせいかもう嬉しいと感じないただ真っ白で透明な意識。
涙さえ拭えぬ身体を、誰かがそっと抱き上げる。
涙を拭う彼に噛み付く俺の口には、もう歯すらもない。
自殺防止に引き抜かれていたのだ。
憎かった、全てが憎かった。
+
俺に付けられた義手義足を、不安そうに見つめる彼。
しかし、俺は嬉しかった。
例え仮の手足であっても、自身の意思で動ける事は幸せだった。
「無理をするな!」
未だ慣れない手足は縺れ、横転しかけたところで彼の腕に包まれる。
礼を言おうにも、俺の唇は動かない。
新しく与えられた歯があるので、もう言葉を発する事は可能なのだが、あまりに長く強制された家畜暮らしに、言葉を発する心を殺されてしまっていたのだ。
そう医者に宣告された時の彼の顔は、よく覚えている。
彼は俺の代わりに泣いたのだ。
「何故お前がこんな目に会わなきゃならないんだ…」
暗いあの部屋から連れ出してくれた彼は、優しく温かい。
放してくれと腕で彼を押し退け俺は歩き出す。
歩いて歩いて、そして転んで笑った。
「お前が笑う姿を、初めて見た…」
驚いた彼が、微かに笑っていた。
彼が笑う姿は俺も初めて見た気がした。
それから半年が過ぎ、俺の意識は完全に正常に戻っていた。
彼の母国の空港で俺を出迎えた彼は、身体を震わせながら俺を抱き締めた。
俺も彼を抱き返し、人目を気にせず口を合わせて泣いた。
彼と俺は、恋仲になっていたのだ。
あれほど最後の別れを偲んだ夜が、今となっては少々恥ずかしい。
数十年ぶりに日本に帰った俺を待っていたのは冷たい石の下で眠る両親と、親戚の冷たい目だった。
当時、盗賊に襲撃されたキャラバンに居た大半の人間は殺され生き残ったのは数名で、その数名もすぐバラバラになっしまったのだ。
義手に義足の俺を見た親戚達は俺の無事を喜んでくれるが、俺の居ないところでは介護を誰がするかでもめていた。
そんな空気に絶えられなくなり、俺は急いでこちらに来る飛行機に飛び乗ったのだ。
そんな俺を空港から連れ去るように抱き上げ、帰宅した俺達は直ぐに身体を合わせた。
寝室に着く暇も惜しみ、玄関に押し付けられる。
その痛みが嬉しい。
「あっ…ひゃっ!!」
数日前の出国する前に時間をかけ愛し合った肛は緩み、彼の勃起を甘く受け入れ肉欲に鳴く俺のうなじを彼の舌が這う。
皮膚に歯を立てられる。
「もう……離さない」
背後から貫かれ、たくましい腕で腹を抱えられ孔を撫でられ、彼が俺の義足を外していく。
支えを無くし倒れた義足をそのままに、軽くなった俺と繋がりを維持し寝室へ向かう。
清潔なシーツに下ろされ、もう一度深く口付けを交わす。
「んあっ!」
熱く激しい口付けに酔う俺の義手を、彼が性急に取り外しながら詫びる。
俺の義手と義足を外すことを、詫びているのだ。
財前一度パニックを起こした俺が脱走した事があったので、彼は俺が逃げてしまわないか不安なのだそうだ。
だから彼は、俺の義手と義足を外したがる。
自力で動けなくなった俺を抱き寄せ、キスし抱き締めキスをし、更にもう一度キスをする。
「あっ、深いぃぃ」
「かわいい」
「ひっ!そこ舐めないでぇ」
「傷口がピクピクしてる…」
彼は行為の最中に俺の歪に縮んだ傷口を舐め、いとおしそうに撫でる。
行為が終わると俺は彼の腕の中に抱き締められ眠る。
義手だけが寝ている間に取り付けられていて、腕を伸ばし彼の体に抱き付く事ができた。
幸せな時間だ。
目を瞑り、眠りかけても一瞬に朝になることはない。
霞んだ意識の中、彼の話し声が聞こえた。
誰かと電話をしているのか、寝惚けた俺の頬に唇を落とし、彼が寝具から抜け出す。
義足がないので後を追うこともできない。
俺は長時間のフライトの疲れと幸せな倦怠感に何も考えずに目を閉じた。
+
大きな盗賊団が内部抗争で惨殺されたとニュースを聞きながら、俺は彼の作ってくれたサンドイッチを頬張る。
ニュースに流れる被害者の顔に、どこか見覚えがある気もしたが、残念ながら顔の区別が俺はできていなかった。
どうやら悲惨な死に方をしたらしい彼等は、生きたまま内臓を抜かれたり、少しずつ皮膚を切り取られ絶命したりと、盗賊団というだけあり相当怨まれた殺され方をしたようだ。
よそ見をしながら食べていたので、ふとウィンナーを刺したフォークを落としてしまい、脚の付け根に軽く火傷をしてしまった。
「あつっ!」
「大丈夫かっ!」
慌てて飛んできた彼が、俺の火傷を氷で冷やす。
何もそんなに大袈裟に反応しなくてもと思うが心配してくれる事が嬉しい。
「可愛いお前を傷付けた奴を、俺は絶対に許しはしない!例えそれが食器でも…」
真面目な顔をしてそんな冗談を言う彼に俺は小さく声を出して笑ってしまう。
まさにラテンの男は一味違うなと変に感動した。
そのまま俺を抱き締め何度も愛していると囁いて顔にキスの雨がふってくる。
END
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