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「……」  衣擦れの音が隣から響き、俺は視線だけで確認をした。 「20連勝」  いえい、と超笑顔でピースを繰り出されたから、頭から布団をかぶった。  また先にイってしまった。負けた。悔しい。  あとえろい。今日も安定のえろさ。  けらけらと笑いながら神谷は着替えを始めている。もう、さっきまで醸し出ていた色気は一切ない。こいつの切り替えどうなってるんだろう。  認めたくはないけど、やっぱり経験の差は埋めようもない。  女と寝たことなら、何度もある。だけど、男相手っていうのはこいつが初めてで。  でも、こいつは違う。  男との経験しかない。だからこそ、どこが弱いか、どこを弄ればイクのか知ってる。  あ、なんかムカついてきた。 「佐野ー? 俺もう行くぞ?」 「はっどこに?」  もぞりと布団から顔を出せば、陽の光に照らされた神谷の猫毛がふわふわきらきら透き通ってて。  こいつ本当にさっきのどすけべモードと同じ人間なのかと疑ってしまいたくなった。すでに可愛い顔の兄貴系キャラ神谷になってしまっている。  じっと見つめてくる俺のデコをべしりと引っ叩き、神谷は小さく息を漏らした。 「今日からバイト入れたっつったろ」 「ああ……」  そういえば言っていた。  勢いよく布団をはぎ取り、ベッドから降りるとすでに準備を整えた神谷を見下ろす。 「飯食ってけ」とだけ、伝えて。  こいつ、放っといたらまともな食事を取りやしない。ちゃんと食わせないと。これ以上痩せさせてたまるか。 「ちょ、ちょちょちょ、パンツくらい穿けよばか!」 「大サービス」  やかましいわ、って頭を叩きながらパンツを投げつけられたからおとなしく穿いて台所へ向かう。  こんななんでもない日常を送れていることに安堵と喜びを感じてる自分だいぶやばいと思いながら、少し遅めの朝食を頬張る神谷を見つめた。  小さい口でもりもり食ってるせいでハムスターみたいになってて可愛い、とか思いながら。

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