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第8話
翌日、冷凍庫を開けた希望は、どろどろに溶けてしまって味わえなかったお目当てのアイスを見つけて、とても喜んでいた。
「ライさん♡覚えててくれたんだ♡」
希望がにこにこしているのを一瞥して、ライは雑誌に視線を戻す。
「てっきりで俺を油断させる口実だと思ってた。ごめんね。愛してるから許してほしい。俺も許します」
「は? 何が?」
「足腰立たなくなるまでヤられたし、ソープなプレイさせられたし、のぼせちゃって大変だったけど、許します」
「お前結構根に持つよな」
「でも、一緒にお風呂って言うのは恋人っぽくて好き♡また一緒にお風呂入ろうね♡えっちはなしで」
希望はにこにこしながらライの隣に座って、アイスの袋を開ける。
しゃくしゃく、ペロペロ。
機嫌良くアイスを頬張る希望を見ながらライは呆れていた。こんなもので許すとか、本当にちょろい。大丈夫かこいつ。
そんなライの視線に気づいた希望は首を傾げる。
「? 食べます?」
「いらねぇ」
ライが甘いもの嫌いなのは知っていたが、あまりにも見ているので社交辞令で聞いてみたが断られる。不思議思いながらも希望はアイスを食べていたが、不意にライがそれを奪ってしまった。
「? 返して」
「嫌だ」
「なんで?」
ライは、首を傾げる希望の頭を掴んで下半身に押し付けた。
「ふぇ……っ?!」
驚く希望をそのままに、ライはゆっくりそれを取り出した。目の前にライのが晒されて、希望は目を丸くする。いつも怖くて、あまり見ないようにしているが、こうして目の当たりにすると息を飲む。こんなえげつないものを突っ込まれていると考えるだけでお尻が心配になった。きゅうと心臓が縮まる。
「咥えて」
「なっ、なんで急にそんなっ、ぅ、んうっ!?」
抗議しようと開けた口に突っ込まれて、咥えさせられる。苦しい。全部入りきらない。
「ははは、つめてぇ」
「ぅ、んぅう……っ!」
離れようとするが、ライに頭を押さえられてて逃げられない。いやいや、と頭を左右に振て、なんとか口から外す。せめてもの抵抗で、ぎゅむ、としっかり口を閉じた。けれどライは希望の厚めの唇の感触を楽しむように擦り付けてきて、希望はくらくらしてきた。さっきまで、冷たくて甘いもの食べてたのに、目の前にあるものは大きくて熱くて、なんか怖い形している。
俺はアイスが食べたいのに! と希望はライを睨んだ。それに気づいて、ライがにや、と笑った。
「ちょっ、なにして…! やぁ…っ、つめたいっ……! あっ、あんっ! やめ…っちょっと……っ、あっ…んぅっ!」
ライが暇をもてあまし、希望の胸をアイスでいじめ始めた。希望の高い体温で、みるみるうちにアイスが溶けていく。
「あっ! ぁんっ…、だめぇっ…!」
「早くしないと溶けてなくなるぞ」
「うぅ……っ! んっ、ふぁっ…ぁっ…! んんぅ……!」
胸の間にライのものを挟んで擦ったり、奥まで咥えて吸い上げたり、手で包み込んで上下に擦ったり、とにかく希望は言われるがまま、懸命に奉仕しようとした。けれど敏感な場所をアイスで突かれたり、なぞられたり、かと思えば乳首を引っ張られたり、お尻を弄ばれたりとライの悪戯が邪魔をする。
なんでこの人、すぐえっちなことばっかりすんの!?
ライに求められるとドキドキして何でも許してしまう自分も自分だが、いくら何でも酷い。隙あらば襲われるし、問答無用で犯される。いくら両想いで恋人同士とはいえ、合意のない行為など許してはならない。
そうだ、これは合意じゃない。なんでこんな恥ずかしい目に遭わなければならないんだ。どんなプレイだ。ライさんのスケベ! 俺のアイス返せ!
希望は、キッとライを睨んだ。両想いでも許せることと許せないことがある。毅然とした態度で抗議せねば! とライを睨む。
「んっ……! もぉっ……! ライさん!」
「んー?」
ライが首を傾げて希望の顔を覗き込む。楽しげに目を細めて微笑んでいた。希望の胸がときゅんっと撃ち抜かれる。ぽやんとした恋する眼差しでライを見つめてしまっていた。
そんな希望の心境を知りながら、ライはアイスの冷たい刺激でツンッと立ってしまった希望の乳首を摘まんで、くりくりと弄ぶ。
「あっ、ぁんっ…やめっ…! だめっ…んっ…ぁんっ…んぅ…っ…あぅ…っ、ライさん……っ」
「なーに?」
ライの暗い瞳が希望を捉えてしまう。ライにじっと見つめられて希望は、少し俯き、上目遣いでライを見つめ返す。
アイスが冷たくてきゅうっと小さくなっていた乳首が、ライの熱い指先に弄ばれて、いつものようにぷっくりとしてきた。熱が伝わってきたのかじんじん痺れて希望の身体がビクビク震える。
「あっ…んぅ…っ、た、たべもので…、あっ、あんっ…あ、あそんじゃ、…んっ…だ、めぇ…っ…んっ……!」
うるうると潤んだ瞳と赤く染まった目元、何より甘い吐息混じりになってしまった希望の懸命の訴えを、ライはあっさりと鼻で笑った。
「お前それで拒んでるつもりなの?」
そう言ってライが楽しげに笑うので、希望は何も言えなくなってしまう。
ライさん楽しそう。何が楽しいのかわかんないし、いじめられるのは好きじゃないけど。好きな人が楽しそうなのは嬉しい。
もにょもにょと口を動かすだけで、ライを見つめたまま黙っている希望の頬を、ライが撫でるようにして上を向かせる。
「上手にできたらこれ返してやるから、頑張って」
そう言って笑うライを見上げて、希望はやっぱり軽率にときめいてしまう。細められた目の奥の暗さにドキドキするし、胸がキュンとした。えげつないもの咥えさせたり、食べ物で遊んだり、他人の身体弄んだりするのはどうかと思うけど、その笑い方はちょっと好き。
希望は半分以上溶けてしまったアイスなんてもういらなかったけど、ライの言葉に頷いた。
「う、うん……っ」
「よしよし、いいこいいこ」
希望が諦めて大人しく従うと、ライも頭を掴むのをやめて撫で始めた。前髪をかきあげ、髪の毛を梳かすように撫でたり、耳の後ろを擽ったり、大きな手で希望の頬を包み込んだりとゆっくり触れる。
ライは強引だし、乱暴だし、酷い男だが、激しい行為の合間には優しく丁寧に触れてくる。飴と鞭って感じ、と希望は思う。だけど、撫でられるのも好きだし触れられるのも好きだ。好きな人がしてくれることは全部気持ちいい。
だから希望は今も、ふわふわと心地よくなって、結局全てを許してしまうのだ。
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