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三十話め
朝起きると目の前にイケメンがいて、しばらくぼーっと見つめる。
「そんな見つめられると照れる」
耳に入ってきた翔来の声で俺の脳は覚醒した。急いで布団をかぶって顔を隠す。
(こんな寝起きの顔見られるなんて!)
恥ずかしすぎてもう無理、絶対振られる、もう振られた、百年の恋も冷めるやつだろ、
恥ずかしさのあまりいっそ泣きそうにすらなってる俺は布団を握りしめて、出てって、と伝えた。だけど翔来が動く気配は感じられなくて、じっと布団の中で息を潜める。
「……寝顔、かわいかったけど」
「なわけあるか!絶対ブサイク!」
ぼそりと言った翔来の声が聞こえたけど、俺は大声で言い返す。すると布団の上から何かに押さえつけられる。
「なあまじ、かわいかったって」
布団を越して翔来の甘い声が聞こえる。からかうような、いと…愛しむような、…自分で言うって俺無いわ、ほんと。
つか俺の上にいるの翔来か、……俺いま翔来が覆いかぶさってるってこと?
「稜、出てきて」
布団ごと抱きしめられるのを感じて、まじ、まじで翔来がいる、とテンションが上がる。布団の中にいるのもそろそろ限界でちょっと顔を出す。
案の定俺の上にいたのは翔来だったけど、顔の距離が近くて、やっぱり恥ずかしい。
「ふ、寝てんのも可愛かったけど、そういう顔も好き」
眉間にシワ寄せて睨んでくるの。
そう言った翔来の顔がさらに近づいて、俺の眉間に唇が触れた。朝から翔来が甘くて、あれもう付き合ってるんだっけと勘違いしそう。翔来の唇に見蕩れていると「こら」とおでこをつつかれた。
(こらってなに…可愛すぎるだろ…)
内心すごく悶えて苦しんでる俺に翔来は続きを言ってくる。
「そんな可愛い顔したらだめ」
「な、っ、ば、ば、か…馬鹿っ」
緩く笑んだ翔来がそんなこと言うから熱が出そうになった。
翔来と一緒に登校すると、女子達が興奮気味に挨拶をしてくれた。今までに何回も翔来と来たことはあるけど、さすが女子というか、何かを感じ取ってるみたいだ。
「あら?あらあら?」
「え〜!!なんか違うくない?!」
「ついに!!?」
あっという間に周りを囲われて、隣に立つ翔来に視線を送る。どうしよう、いざこんな聞かれると恥ずかしいというか、……うん恥ずかしい…
俺の表情を汲み取った翔来がにっこり笑って俺の頭を撫でてくれた。
「あっ!いちゃいちゃ!」
「かわいいぃ」
ちゃちゃをいれられて、ますます顔が赤くなる俺。
すると翔来が「あんまし言われると照れるってさ」と俺の気持ちを代弁してくれて、俺の気持ちわかってくれる翔来だいすきっていう想いが溢れる。それを見た女子にまたからかわれたけど、俺はヨシと気持ちを決めて、顔を上げる。
「あ、あのさ、…いつも、話聞いてくれて、ありがとう…」
女子達は目を輝かせながら相槌を打ってくれる。
前からも後ろからもすごい視線を感じて、これから言うことに、めちゃくちゃ緊張する…。
「…それで、俺、……俺、」
告白してもらえたんだ、って一言が出てこなくて、ただひたすら顔が熱くなる。はやく、早く言ってあげたい。そう思うのに喉でつっかえてしまう。
「………稜、大丈夫だよ」
言ってみ?と翔来に優しく声をかけられた。
不思議なことに、ふっと喉のつっかえが取れる。
「うん、…あの、俺、翔来に、告白して、もらえたんだ…。みんなが話聞いてくれたから、自信持てたし、本当ありがとう、」
長く待たせてしまったのに女子達は嫌な顔もせずに、きゃあと歓声を上げた。
「おめでとうぅ!」
「ここにカップル誕生だよみんな!」
「お幸せに〜〜!」
「式場はどこ!?」
まだ決まってねえよ、と翔来が笑う。
……まだ、って。いつか、してくれるってこと…?
ポッポポッポと頬が熱くなってきた。
「翔来…」
指先に軽く触れると後ろにいた女子が何人か倒れた。わあわあ慌ててみんなで起こすと倒れた全員が幸せそうな顔をしていた…。
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