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19:30
12月31日大晦日。寮では、晩飯に蕎麦食って、それから年越しを祝って、寝る。
その間、寮長である先輩は何だかんだ忙しい。
俺が独占できる暇なんてない。
昨年は深夜のパーティーの後、みんな先輩の部屋に挨拶に行ってた。
昨年は特別な関係じゃなかったから、新年に挨拶に行って会えるってだけで嬉しかったけど。
今年は、先輩に許されてもっと深く知って、それだけじゃ満たされない。
しっとりとした白い肌、ふっと吐き出される息、俺を包む熱に、俺を見る潤んだ瞳。
あぁ、あの首筋に齧り付きたい。
皆の前から連れ出して、閉じ込めて、俺だけを見て。
そしたら、最高に幸せに今年を終えられるし、最高に幸せな1年を迎えられるのに。
「山本、手伝って」
「はい」
時計を見れば19:30。
そろそろ蕎麦の準備かな。
そう思いながら、着いていった先は備品庫。
あ、今なら2人きりだ。
備品庫の鍵は先輩が持ってるから、中から鍵をかけたら外からは開けられない。
ガチャと後ろ手で鍵をしめる。
先輩は気付かない。
「先輩」
後ろから腹に腕を回して引き寄せる。
よろっとした先輩は俺に背を預けて止まった。
「びっくりした、なに?」
「我慢してたんですけど、先輩に触れたくなって」
「っな!に言ってんだ」
先輩の首筋が赤くなる。
「だって、本当は、独り占めしたいんです」
皆の寮長じゃなくて、俺だけの先輩がいい。
この首筋に齧り付いて、跡を残して俺のだって言いたい。
「……オレも」
腕の中で体を返した先輩が俺の肩に頭を押し付ける。
「え?」
「今年は、2人で過ごしたいから、勝手に2人分の外出許可とった」
「えー……と」
「22時から明日の10時までオレといっしょに過ごして」
待って、先輩耳が赤い。
絶対可愛い顔してんのに、なんで隠すの。
顔を掴んで、あげさせたら。
潤んだ瞳に、俺がうつって。
ああ、やばい、キスしたい。
首を伸ばして、啄むみたいにキスする。
足りない。
もっと。
「ちょ、と待って」
ぐいっと先輩に押される。
「2人で出掛けるためにさっさと仕事終えなきゃいけないんだ」
ちらりと時計をみる。
出掛けるまであと2時間半。
2時間半したら独占できる。
だから2時間半くらい我慢できる。
本当は、嫌だけど仕方ない。
俺は泣く泣く腕の中から先輩を解放した。
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