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カウントダウン・セックス01

~道元坂×智紀の場合~ 智紀side 「たっらいまぁ……あれ? ああ、そっか。間違っちった」  真っ暗な家の廊下を見て、酔いが少し醒める。冷たい空気が頬を撫でると、寂しさがこみ上げてきた。バイト先の飲み会のあと、ふらふらと歩いて帰ってきたのは、道元坂と一緒に暮らしているマンションだった。  うっかりいつものマンションに帰ってきてしまった。今は蛍の屋敷にお邪魔してるんだった。  ああ、道元坂……いないんだっけ。中国に行くって言ったきり、帰ってこない。兄貴と道元坂は、仕事の関係で連絡を取り合ってるみたいだけど。  俺には全く連絡はない。仕事に夢中になった道元坂はいつもこうだ。俺って、道元坂にとってなんだろうって不安になるくらい、連絡してくれない。  だからって俺からもしないけど。仕事の邪魔したら嫌だしな。  俺にはわからない難しい取引とかしてんだろうし。きわどい交渉してるときに、ピロンってスマホが鳴って『俺のことどう思ってんの?』なんて文面を見たら……興ざめだろ。  邪魔をしたくない。道元坂はすげえヤツだから。道元坂の仕事の邪魔をしたくないんだ。でも寂しいんだ。   靴を脱いで、ヨロヨロと家にあがる。冷たい床を踏みしめて、寝室に入った。肩にかけた鞄を床に落とし、上着を脱ぎ、そのままベッドにダイブする。  ほわほわの羽毛布団に身体が沈んで、俺は酔った頭で、中国にいるであろう道元坂を妄想した。

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