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第14話

残り時間は12、3分。 有無を言わさず体の中に押し入ってくる、大きな圧力を受け入れる――。 「――っ! アラタ」 「痛い、ですか?」 「痛いとかじゃない、ただ……」 頭の中に火花が散って、自分が違う世界へと引きずられていってしまうような衝撃を感じた。 「好きだ……アラタ……」 自分でも驚く。 こんな状況で出た言葉は、間の抜けたような愛の告白だった。 「……先輩」 背後から腰をつかむアラタの両手に、力がこもった。 「なんでそれ、いま言うんスか!」 「分からないよ、ただ思っただけ」 「バカだな……余計、優しくできなくなる」 アラタの腰が後ろから打ち付けられる。 「ふ、くっ!」 宣言通り、容赦なかった。 けれどもローションでさんざん解されたそこは、容赦ない攻撃にも燃えるような快感を覚えてしまう。 「好きだからっ、好きにして」 こうなると傷みのことなんかより、快楽に溺れた自分がどうなってしまうのかということの方が怖かった。 アラタはお許しを得たとばかりに、熱心に腰を使い始める。 ついさっき見つけたばかりの気持ちいいところを摺り上げて、まだ奥へと進む。 大きな先端が、体の中のひだをぐいぐいと押し拓いていくのが分かった。 「あ――…!」 へその裏側に突き刺さる、甘い重みを感じる。 中を何度も蹂躙されるうち、グラグラとめまいがしてくる。 あと何分……と、時計を確認しようとしたけれど、もうダメだった。 「あ、は……いいっ! 春一さん……」 乱れた息の合間で、ふいに名前を呼ばれて驚いた。 なんで今さら、このタイミングで呼ぶのかな。 もうこのまま、最後まで『先輩』で押し通すものかと思っていたのに。 「アラタ……」 振り向き顔を見て、泣きそうなその顔にきゅんとさせられた。 キスのその先は、恥ずかしいところを見せ合うって言ってたけど。 こいつのそんな顔を見られるなら、僕は何されたって構わない。 ぐちゃぐちゃに突き上げられながら、違う涙が出た。 それから先のことは、実はあまり覚えていない。 中でアラタが果てたあと、未開封のスキンを見て謝られたのは覚えているけれど。 ふたりクタクタになって仰向けに横たわり、壁の時計を見る。 時刻は0時15分。 満足そうに目を閉じる恋人の横顔を見るに、僕は一応、1年前の約束を果たせたらしい。 「アラタ、ハッピーニューイヤー」 年明け一番に言いたかったのに、ちょっとだけ遅刻した。 「先輩、新年おめでとうございます……」 アラタは掠れた声で返してくる。 「もう名前、呼んでくれないの? 春一って」 「なんか今さらで、恥ずかしいじゃないスか」 「ええっ……アラタは変なとこカッコつけるよな?」 「これで先輩の前では、めちゃくちゃカッコつけてるつもりですよ」 オレンジ色の明かりの下に、幸せが満ちていた。 きっと今年は、すごくいい年になる。 僕はそれを確信し、目を閉じた――。 <終わり>

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