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第14話

体に不快感を感じて飛び起きる。……つもりだったのに、起き上がれない。横にあるはずの手がなぜか頭の上から動かなくて、それが起き上がることの邪魔をする。 次いで目を開ければ、そこには信じたくない光景が広がっていた。 「何、して……?」 まず驚いたのは自分の格好。確かに服を着て寝たはずなのに、全てが剥ぎ取られている。そして体勢。腕を頭より上の方で固定されて、脚は大きく開かされているようだった。その間に翔が位置できるほどに。最後に、下半身に感じる違和感。 「好きだって言ったでしょう」 その言葉と同時に、体の中で何かが蠢く。違和感の正体がそこにあると気付いて、何がどうなっているのかが知りたくて、頭だけでも持ち上げようとお腹に力をいれる。 そんな僕の行動を笑うように伸びた翔の手が、わずかに浮いた頭を押さえつけた。その手は目へと動いて、視界が黒でいっぱいになって、そんな中で彼は言い放つ。 「トールはね、今から俺に犯されるんだよ」 耳元で甘く囁くその声は、僕にとっては恐怖にしかならない。「犯される」という言葉、そしてこの状況。平静でいられるわけがなかった。 「放せ……!!」 思っていたよりも大きな声が出たことに自分でも驚く。辛うじて自由と言える足をジタバタと動かすが、体勢が悪くうまく力が入らない。 「暴れないで」 決して荒くはない口調なのに、体は大袈裟に反応する。緊張から無意識に足の動きは止まっていた。眠る前には居たはずの反省の色を見せた翔は、今はもうどこにも居ない。強い視線が、上から注がれ続ける。 あれが夢だったのか。 それとも今の状況が夢なのか。 後者であれと強く願うのに、鮮明すぎる体への刺激がそんな願いを打ち砕く。 「嘘、つき……!」 今までのことを反省してくれたと思ったのに。彼の言葉を、信じそうにもなっていたのに。 1日も経たないうちに裏切られるなんて、あんまりだと思う。しかも、こんな形で。 「嘘つき……?」 口をついて出た翔を非難する語に、彼はしっかりと乗ってくる。今までよりも大きく動いた彼の指は、今まで以上の快楽をつれてきた。 「ひぁっ!!?」 意識せず出た声はなんとも情けない。そう思うのに、止まらない。 「やっ、やめっ……!」 「嘘?俺がトールを好きだってことを、まだ嘘だと思っているの?」 そこじゃない。そこもだけれど、聞きたいのは現状の理由。どうしてあの反省した態度がこう繋がったのか。好きだというなら尚更、どうして翔はこんなことを。 「どうしたら伝わる?優しく言ったら伝わった?……そんなはずもないのに」 問いかける前に、翔は1人で喋り続ける。ただ淡々と、それでも怒っているような様子は、暗いオーラに包まれているみたいだった。 それでもなお、指は止まらない。それが思考を奪い続ける。意味ある言葉を紡げなくなる。 「んぁ……!」 「トールが悪いんだよ。言葉で言っても伝わらないから、こんなことになった」 そして翔は、動きを止めて言ったのだ。 「俺に愛させてよ。愛し返してよ……」 伝わらないと決めつけて、伝えなかったのは翔だ。それなのに、こんな仕打ちは理不尽だ。僕が責められるのは理不尽だ。そんな思いを込めて力の限り睨む。 「応えてくれないんだね」 ため息混じりに吐かれたその言葉と同時に、体のナカに感じていた異物感が消える。やっと終わったのかと安堵して、強張った体から力が抜けた。 「……当初の計画通りでいこう」

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