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第13話

「ごちそうさま」をしてソファに座って、しばらくしたあとに何故か急激な眠気に襲われた。最近驚くことの連続で、体が休息を欲しているのかもしれない。 お風呂に入ろうと思うのに体に力が入らない。 ベッドに入る前にここで眠ってしまいそうだ。 いくら翔の機嫌がいいとは言え、こんなところで寝たら小言を言われてしまうだろうに。 そう思いながらもだんだんと目が開けられなくなっていく。すぅっと意識が飛んでいく感覚がして、僕は眠りへと落ちていった。 「おやすみ、トール」 ○○○ すやすや眠るトールを見て、愛しさと憎さがこみ上げてくる。俺以外のことなんて考えなくてもいいのに。ずっとここに居てくれさえすれば、何不自由ない暮らしをさせてあげるのに。 この家を飛び出しての、篠崎の家での一泊。そんなトールの行動に、どうしようもなく裏切られた気分になった。 「トールは昔から、俺のいうことを聞けない子だもんね」 こうして眠っていればされるがままで、可愛い顔だって向けてくれる。それなのにトールは、起きた瞬間から俺を避け始める。 もう、どうすればいいか分からなかった。 だから、もう諦めた。 トールに遠慮することを、諦めた。 「トールは俺のだから……」 誰にするでもない確認。自分の行動の正当化。 少しの罪悪感を添えて口付けるが、それでもトールが目を覚ますことはない。 よく効くと噂の睡眠薬をいれたのだから、多少の刺激では起きないだろう。 トールの体をベッドへと運び、そっと横たえる。毎日同じ物を食べてきたはずなのに、その体は自分よりとても軽く感じた。 次いでトールの両手を拘束し、全身の服を床へと投げ捨てる。きっと篠崎のものであろう自分が見たことのない服ばかりで、一層憎しみが増していく。 「……逃がさない」 心臓近くに耳を当て音を聞く。聞いているとトールと一体化していくかのようで心地いい。ずっとこうしていたいけれど、それではトールを眠らせた意味がなくなってしまう。 用意していたローションを指へと絡ませ、トールの後ろへと塗りたくっていく。息が漏れるような、くぐもった声を聞く度に興奮して、自分の体温が上がっていくのを感じた。 焦ってはダメだと言い聞かせ、まずは1本の指だけをトールのナカへと入れ込む。 「んっ……」 苦しげな声が愛しくて、もっともっと奥へと動かした。しばらく続けていると締め付けが緩くなってきたような気がして、もう1本指を増やしてみる。 この先のことを考えると早くしたくてたまらなくて、でも初めては意識のある状態でと決めているから、これ以上はまだ進めない。 せめて起きてからの苦痛が和らぐようにと、少しでもトールにとってもいい思い出になるようにも、念入りな準備を続ける。 ……本当は、気持ちが通じてからこうするつもりだった。でも強すぎる独占欲が邪魔をして、一緒にいる時間が長いほどトールには嫌われていく。 気持ちを確かめるための行為は今日、気持ちを無理やりに植え付けるための行為へと意味を変える。 これだけのことをしても反応が返ってこないのが虚しい。こんなやり方しか出来なかったことが悔しい。本当は、愛し返してほしかっただけだったのに。 でもきっとそれを求めるには、俺は選択を間違えすぎたのだろう。 そしてこれも、間違った選択なのだろう。 それでもトールを、俺のものだと感じたい。

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