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4.我只是愛你而已(ただ貴方を愛しているだけ)(完結)

「嫌われていないならそれでいい。私がその分愛しているから」  劉峰(リュウフォン)にさらりと言われ、さすがに白明(バイミン)は恥ずかしくなった。うっすらと頬を赤く染めて俯く様子は小動物のように、仕えている者たちには映った。  無礼講という名の宴席が設けられ、宅邸(屋敷)に勤める者たちも席についた。みなにこにこして劉峰と白明を見守っている。その視線には好奇心はあったが不思議と悪意は全く感じられなかった。白明はなんとなく居心地は悪かったが、こんなに仕えてくれる人々に暖かな視線を向けられる劉峰が少し誇らしかった。 「私は白明を伴侶とし、この先妻を娶らぬと誓おう。みなもその心積もりでいてくれ」 「「「恭喜主人、恭喜夫人、祝你们永遠幸福!!」」」(ご主人、奥様おめでとうございます、どうか末永くお幸せに!)  白明はもう恥ずかしいなんて言葉では収まらず、ただただ顔を俯かせることしかできなかった。 (奥様って、奥様って……)  白明はもうこれで全てが済んだと思っていたが、残念ながらそうはいかなかった。  あれよあれよという間に衣類をむかれ湯殿に放り込まれ、自分よりも力の強い侍女たちに隅々まで洗われてしまった。彼女たちは白明の無残な股間を見ても一顧だにせず、淡々と洗うと薄絹の睡衣(寝巻)を着せて見知らぬ部屋へ彼を連れて行った。 「こちらでお待ち下さい」  広い居間を抜けて直接寝室に通される。やっぱりそういうことなのかと白明は泣きそうになった。(ベッド)には透けて見える布がかかっており、その横に卓子(テーブル)のセットがある。侍女たちはそこにお茶の準備をし、水差しを置くと下がった。 「何故、私なのだろう……」  劉峰は男でも惚れ惚れするような美丈夫である。対して自分は……と白明は自嘲した。去勢したせいかどうかは知らないが白明はあまり背が伸びなかった。かろうじて張妃より高いぐらいで、身体も薄い。貧相、と言われてもおかしくない体格と柔和な表情が彼を中性的に見せていた。 「もうあと数年で三十になるというのに何を劉峰さまは血迷っておいでか……」  きっと劉峰は現実を知らないのだと白明は思う。劉峰が生まれて、「白明! 白明!」と懐かれて本当に嬉しかった。だから時間を見つけてかまった。甘やかした自覚は大いにある。そう、ずっと劉峰は白明が大好きで、七歳で後宮を出る時本当に嫌がった。何故白明を連れていけないのかと本気で怒っていた。  王が許せば白明は劉峰に着いて後宮を出ることができただろう。けれど後宮は常に人手不足で、白明は張妃付ではあったが他の妃の世話をしなければいけないことも多々あった。 (そういえばあの時……) 「劉峰さま、宦官は王の持ち物です。王がよいと言わなければ後宮を出ることはできません。白明はずっとここにいます。しっかり勉強をして、体を鍛えて、王の助けとなるような立派な王子になってください。そして時々その成長を見せていただけるととても嬉しいです。劉峰さまの健康と幸福を心から祈っています」 「……わかった。いつかそなたを……」  涙を浮かべた目元を袖で拭い、力強い眼差しで白明を見つめた少年を思い出した。 「すまぬ、遅くなった」  いろいろ思い出していたせいか劉峰が部屋に戻ってきたことに気づかなかった。しまったと思い、白明は飛び上がるようにして椅子を立った。  劉峰はそんな白明を舐めるように眺め、 「まだ起きていた、ということはいいのだな?」  舌なめずりをした。白明はぼんっ! と顔が熱を持ったのを感じた。   「だめっ、そこはだめです!」  嵐のような口付けを受け、白明は(ベッド)に押し倒された。劉峰の舌が白明の舌を捕え、口腔内を舐め啜る。舌を絡められた時、腰に痺れるような感覚があり白明は戸惑った。その痺れは何故かどんどん股間に溜まり、ほんの少しだけ残っている白明自身を立ち上がらせた。  白明は六歳で去勢された。農村での施術がいいかげんだったのか、しっかり根元から切ったわけではなく少し白明自身が残った。それが成長するにしたがってまた少しだけ大きくなったので全く部分がないわけではなかった。しかし切断した部分は生々しく、自分で見ることに慣れたとはいえ誰かに見られるなど論外だった。だから劉峰の手がそこに触れた時白明は真っ青になった。 「何故?」 「いやなのです! わかってください!」 「……わかった。今日のところは許してやる」 「ずっとだめです!」  劉峰の手をぎゅうぎゅう掴んで押しのけようとする。劉峰はやっと引き下がったがこれで済むはずはなかった。 「まぁそう言うな」 「んっ!」  再び口唇を塞がれ睡衣をはだけられる。主に屋内で過ごしていたせいか肌は白いままだ。ひょろひょろした身体に触れられるのが白明はひどく恥ずかしかった。そしてその太い指先が淡い色をした乳首に触れた時、白明はひくり、とその身を震わせた。 「……んんっ……」  口付けをされながら両の乳首をくにくにといじられる。むずがゆいような、なんともいえない感覚に白明は無意識に腰を揺らす。それを横目で見た劉峰はほくそ笑んだ。 「……はぁ……」  口付けを解けば白明の口から甘い吐息が漏れた。それに煽られたのか劉峰が白明に腰をぐりぐりと押し付ける。太ももに劉峰の固い昂りを感じて白明はぶるりと震えた。今まで白明は誰かと関係を持ちたいと思ったことはなかった。宦官であることを受け入れていた、ということもあったが、誰に対してもこんな狂おしいほどの熱を感じたことはなかった。 「白明、白明、優しくする。優しくするから……」  女性に対しては自分が宦官ということで諦めていた部分もあったが、こんなにも必死に求められたこともなくて。 「……痛いのも、つらいのもいやです」 「ああ、わかっている……」  白明自身は女性と性行為はできないと思っていたが、後宮にいたので男女がどうやって性交しているのかは知っていた。そして初めての場合は痛みを感じる、ということも。  劉峰の荒い息づかいに欲望を感じ、白明は頬を染める。顔を背けた途端身体をひっくり返され、うつ伏せにされたことに戸惑った。 「いい香油を手に入れた。これでそなたに極力痛みを与えずにすむはずだ……」  そうは言われてもとろりと垂らされた香油の感触とか、後ろの蕾をくにくにと揉まれる感覚に白明は泣きそうだった。 「白明、白明……」  はあはあと首筋にかかる荒い息づかいが劉峰の欲望を伝える。彼はとんでもない忍耐力で白明の蕾をほぐし、二人が汗だくになった頃ようやく自身で白明を貫いた。 「……ッッッッ!!」 「……やっと、やっと入った……白明、大丈夫か?」 「……ふぅっ、うっ……」  覚悟していた痛みはそれほど強くはなかった。ただ蕾を開かれる感触が生々しくて、これが劉峰の、と思っただけで白明はその身を震わせた。 「白明、愛している……」 「ああっ……!」  痛い、つらい。けれど劉峰にそんな風に言われたら、白明は全て許してもいいような気がした。  もちろん入れただけで終るはずもなく、白明は劉峰が達するまで中で何度も出し入れされて最後は気を失うように眠りにつくことになってしまった。      翌朝、白明は更にとんでもない目に遭った。  股間がなんだか気持ちいい……と思って目を覚ますと、なんといびつな白明自身を劉峰が舐めしゃぶっていたのだ。 「○△×□!!!!」  そのまま白明自身が達するまでいじられ、更にまた劉峰自身を受け入れて白明は散々に啼かされた。  白明は本気で怒って出て行くそぶりを見せたが、さすがにそれは宅邸の者たちも総出で止められた。  その後劉峰は家令にこんこんとお説教をくらい、三日間白明接近禁止令を出されて意気消沈したがそれもいたしかたないことだろう。  何故劉峰が白明を娶ろうとまで恋焦がれたのかは今のところ二人だけの秘密である。  ただ二人がいつまでも幸せそうに寄り添っていたことだけは確かで。 「白明、私は物心ついた時からずっとそなたを……」 「もうそれは何度も聞きましたから……」     終幕

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