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第1話
むかしむかし、とある地方に橘と東条という地主がいた。
両家の仲は険悪で、たびたび大規模な闘争を起こすほどであった。
両家にはそれぞれ子息と令嬢がいた。子息は橘壱瑠 。令嬢は東条葵 。二人は恋仲だった。
親の目を盗んでは隠れて二人で逢瀬を交わしていた。
しかし、隠れて会うことを親たちに知られてしまい、見合いをさせられることになった。
もちろん二人の見合いの返答は「お断りする」というものであったが、親たちに強引に見合いを推し進められ、結婚する段取りまでつけられてしまった。
式の日取りは同じ日の同じ時間、式場は治めている土地の両端というあまりにもひどい仕打ちであった。
親たちは二人に結婚式から逃げられないようにとの思いから常軌を逸した行動にでたのだった。
そんな親の思惑に気づいた二人は密約を交わし、結婚式当日式場から逃げ出した。
待ち合わせ場所に行くと、もう令嬢の方は到着していた。
子息が遅れたことを詫びながら、場所を移動した。
移動した先はここらでは有名な流れの速い川の側だった。
二人は来世では必ず結ばれることを誓い合い、それぞれの懐から短刀を取り出し、お互いの腹に突き刺した。
そして、川へ身を投げ、そのまま行方知れずとなった。
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