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第1話

 世の中にはどうしようもないやつらがうようよいる。柊馬の周囲はそういう人間で溢れていた。  まだ自我の固まっていない十代の学生たち。ほとばしる選民意識と歪んだ好奇心は、まるで針のむしろのようにチクチクと突き刺さり、柊馬の平穏な日常を奪った。  彼らは学校という檻の中で、幻想にまみれたアンバランスなカーストを作り出す。他人を蔑むことで抑圧された感情を解放しているのだろう。犠牲になったのは、宗近柊馬(むねちかしゅうま)その人だ。  ――ホモ。気色悪い。ホモ菌が移る。ケツを守れ。  まるで幼稚園児かと思うほど稚拙な言葉が、教室のあちこちで飛び交い、時には紙切れに雑言を書き散らして投げつけられることもある。もちろん教師の目を盗んで。  自分と違うものを蔑む排他主義な子供たち。彼らにとっては柊馬など人間ですらない。『異物』に対してどんな態度をとろうが、良心が咎めることはないだろう。なにしろ彼らは正義なのだから。  まったくアホらしくてものも言えない。  柊馬は教室の中で完全に孤立している自分を鼻で笑った。おおよそ二年に渡る高校生活の中で、自分にも友人と呼べる存在がいたはずだ。しかし周囲には誰もいなくなった。最初から一人きりだったかのように、孤独だけがひっそりと寄り添っている。  こんな状況になったのは、相手を信じて同性に告白してしまった柊馬の、浅はかな過去が原因だった。

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