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第18話

* * *  行為を終え、無言のまま身支度を整えていると、入江がぽつりと呟いた。 「諦めるの、やめろよ」 「は?」  唐突な言葉の意味がわからず首を傾げると、入江が思いのほか真剣な表情で柊馬に向き直る。 「俺、兄貴とずっと比べられて生きてきたから、いつも窮屈だししんどかった。でもおまえは教室に兄貴が来ても見向きもしないで、いつも一人でいたから……それが、なんか……」  言わんとすることが理解できず、沈黙したまま入江を見ると、ほんのりと頬を赤らめた彼が続けた。 「本当はずっと、友達になりたかったんだ。でも、おまえは俺のことも全然興味ないって感じで無視するし、腹が立って……」  それで妙につっかかてきたわけかと納得はできるが、小学生と同レベルの言動にはやはり呆れてしまう。 「だから、お前が俺のこと好きって言うなら、ちゃんと考えるから……」 「え……」 「もう宗近に無視されたくない……」  柊馬の服の裾を引っ張りながら、弱々しく本心を吐露する入江に、一瞬呼吸を忘れる。急に素直になりすぎだろ、と思う反面、ちゃんと名前を呼ばれることを嬉しく思う自分もいる。  ――なんだ、俺、こいつに名前を呼んでほしかったのか……?  あれだけ意地を張っていた理由が、そんなバカげたことだったのだと気づいた瞬間、柊馬は脱力した。心の中で入江をガキだとバカにしていた幼稚な自分が恥ずかしくなってくる。  今はまだ入江の誤解をとく気になれず、柊馬は目の前で俯いている少年に告げた。 「じゃあ、友達から始めるか」  パッと面を上げた入江が見せたのは、嬉しげなあどけない笑顔だった。 【おわり】
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