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第1話
昼休憩の屋外スモーキングルーム。
快晴の青空の下、紫煙を吐きながら空を見上げる一人の男。
その立ち姿は凛として、細身の身体に上質なスーツが何処かのポストカードのようだと屋内の騒がしさとは違い過ぎるその光景、その容姿に見惚れていた。
八洸物商株式会社 営業企画部。
そこには社内一のキレ者と噂される清藤 友海 がいる。
それは八洸で働いている者なら知らない奴はいない。
高身長、高学歴、高収入…そんな謳い文句のように流行った言葉がぴったりと嵌る。おまけに容姿端麗をも備えていた。
奥二重の切れ長の目。目力の圧力と言えばこの人の右に出る人はいない。
そんな彼はキラキラと光る太陽の光に目を細めながら、フェンスに肘を付き、空を見上げていた。
「元希、どうしたの?」
猫撫で声で指先でに髪を巻き付け、俺を見上げるこの人はそろそろ終わりかな…なんて思っていながら付き合っている女。
髪を撫でてやりながら視線はその先の屋外の清藤へと向いていた。
第一営業部の真田 元希 はその絵になる光景を見入っていた。
(いつ見ても綺麗な人だな…)
そんな事を思いながら、週末の予定を立てている女の話を上の空で聞いていた。
入社二年目。会社にも慣れ、流行りのような社内恋愛での彼女もできた。それなりにモテるとは自負しているがあの人を知ってから、モテるというものの次元は違うのだと知った。
誰からも慕われ信頼も厚い。噂で聞くキレ者だというのも納得いく隙のないスタイルに何故か闘争心が湧く。
自分だって、高身長、高学歴、そして同じように人望はあると思っている。だがあの人と何が違うのか。あの若さで課長…収入の差はあるとしても年齢差だってある。そう思っては自分と比べ、いつの間にかその姿を目で追う自分がいた。
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