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第147話

「日本には帰ってきてから……実感湧いてきたというか、またお前と一緒に暮らせるんだと思ったら……」 「戸惑ってる感じ?」 「……気持ちがまだ追いついて来てないっていうか、自分に言い聞かせてる……」 (まだ気持ちのバランスが取れてないってことか……) 「……もうここで一緒に暮らせないかもしれないって、怖くて……でもお前は生きててこうやってここにいるのに……不安でさ。もう怖いことはないって……」 「友さん……」 恐怖と絶望に心が震え、どれだけの気力で過ごしていたのか。愛する人を無くすことを知っているだけに清藤はまだ不安と隣り合わせでいる。 「帰ってから、一緒に風呂に入ったのに……さっきドアを開けたお前を見た時……呼べばお前が返事して、こうやって来ることに胸がいっぱいになって……ああ、こんなことでも幸せだって思えるんだなぁって……」 「そう……俺も嬉しかった。友さんに呼ばれて……それに思ってること聞けて俺は嬉しいよ。不安になったら、いつだってどこでだって、何度だっていい、こうやって聞きたい。胸に溜めずになんでも言って?」 「……元希は優しいな」 「だって、惚れてるからね。どんな友さんでも愛おしいし、可愛いくて堪らない」 「可愛いって、アラサーのおっさんに……」 「可愛いよ、歳なんて関係ない。俺の恋人はカッコよくて可愛い。背中擦り寄せて転んだり、一緒に風呂に入るって駄々こねる友さんはっっ」 慌てた清藤は真っ赤な顔で、真田の口元を手で押えた。その表情はやはり真田の大好物だった。 「やめて!恥ずかしから!」 「ははっ、友さん可愛い。 だからもっと可愛がらせて?」 「元希……」 濡れた髪に指を通した清藤は、ゆっくりと跪き、その先の甘い唇に触れた。 清藤を抱きしめられる嬉しさと、甘い表情にスイッチが入る。 少し痩せた清藤を抱きしめ、その唇を貪った。

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