80 / 80
第80話 最終話
下着とは違う、乾いたかさばる感触に、上がけをめくって自分の下半身を調べた。
「え? ぇは?」
目を剥いて股間を見つめる。そこにはなぜか破れかけの紙オムツがあった。
「ええ? こ、これ。な、何ですか?」
驚く結太に、宗輔はニヤニヤと笑ってみせた。
「お前、昨日の夜、あの後どうなったか記憶はあるか?」
「……ええ? まさか。……ないですけど。……え? 冗談、ですよね?」
「昨夜、術のかけ直しをしただろ。あれで、百日間の魂の浄化が、今度こそお前のほうに移ったらしいな」
「嘘」
「嘘かどうかは、動画を見ればわかる。ちゃんと証拠に撮ってあるぞ」
宗輔が枕元においてあったスマホを手にする。電源を入れると、赤ん坊のか弱い泣き声が聞こえてきた。
「これお前」
「……まじで」
「今日から百日間、俺がお前を育てることになりそうだな。俺もついに育メンデビューか」
悪い笑顔になって、結太を見てくる。
「……」
せっかく呪いが解けて、平穏な毎日が戻ってきたと喜んでいたのに。またこれから百日間、振り回されなければならないのか。
結太はかるい目眩を覚えた。
呆然としていると、手を引かれて、広い胸の中に取りこまれる。
「ちゃんと扱い方を教えておけよ。アレの取りかえ方も、しっかりな」
ものすごく楽しみな顔で囁かれた。
結太の頭の中が、これから仕事はどうなるのか、経験のない宗輔が果たしてまともに育児ができるのかと、グルグルあれこれ混乱する。
そんな魂が抜けたようになっている結太に、けれど、宗輔は嬉しそうに、明るいキスをしてきたのだった。
おわり
ともだちにシェアしよう!