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プロローグ

午前8時30分。 靴紐を固く結び直して玄関を出た。 途端に感じる冷え切った空気に身震いしながら通学路を歩いていく。 今日は3学期の始業式だ。自宅から一番近い私立高校に入学したのが去年の四月。やっと学校にも慣れてきて、仲がいいと言えるくらいの友人もできた。元々の実力より少し上の高校なので勉強についていくのは大変だが、元来の負けず嫌いが功を奏し成績も学年で上位に食い込むようになった。 今年も例に漏れず程よく勉強もしながら存分に寝正月を過ごし、弛みきった身体と精神を叱咤しながら只今登校しているわけだが。 (その前に) 閑静な住宅街を抜けて大通りにでると、自宅から一番近いコンビニに入る。送り忘れた人用なのか、未だレジ近くに置いてある年賀状を横目に雑誌コーナーへと向かった。 「あった.....」 いくつかのメンズ雑誌が並べられている中、迷わず一つの雑誌を手に取る。表紙には、赤と黒のシンプルな背景に蠱惑的に微笑むモデルが1人。 (うわ〜.....西野蒼、今日もめちゃくちゃかっこいい.....) 綺麗な二重に長い睫毛、どことなく切れ長で、しかしキツイ印象のない目元。スッと通った鼻筋、少し薄い唇。造形のいいパーツ一つ一つがあるべき場所に置かれている。栗色の髪の毛は日本人離れした顔立ちの彼によく似合っていて、さらに魅力を引き立てていた。 ほう、と溜息を一つついて我に帰る。やばい、遅刻する——! 慌ててレジへと持って行き代金を払うと、小走りでコンビニを飛び出した。

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