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空疎-kuuso-3
何処か心がぽっかり空いたまま、俺は高校を卒業する前、ある雑誌のオーディションを受けた。
沢山の中から選ばれてグランプリを取り、読者モデルからその雑誌の専属モデルになった。注目を浴びて事務所からのオファーもあり、モデル以外の仕事もこなすようになっていった。
「もう、求めない方がいいのかなぁ。」
身体の関係を持っては別れを告げてを幾度となく繰り返し、欠落してしまった部分は元々もう無いものと思うようにして、俺は求める事を諦め掛けていた…。
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今日は打ち合わせ。
ファンクラブや宣材写真に使う写真を撮ってくれるカメラマンさんが来てくれるらしい。
マネージャーの知り合いらしく、どんな人だろうと会議室で待っていた。
コンコンコンっ……
「…はぁーい。」
ガチャ…
「失礼しまーす。」
マネージャーと一緒に男が入ってきた。身長は俺より明らかに低く、少し重めのふわふわした黒髪で可愛らしい顔つきをしているラフな服装をしたカメラマンだ。
目が合った…
二重で大きな茶色い瞳だった。
俺はドキッとした。鼓動がうるさく鳴り、急激に体温が熱くなり、この人にすぐにでも触れたいと思った。
埋まらないと諦めていた物が彼の存在で満たされそうな気がした。
__________初めての恋に落ちる。
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