37 / 227

旋回-senkai-2

「なんか俺、途中から二人だけの空間にいる気分になって、すごく、すごく……幸せでした。」 彼はどこか寂しげに俺にそう伝えた。 「また寂しそうな顔してる……。」 彼女と別れて未練でもあるとかそんな感じだろうと思っていた。 「そうですか?なにも寂しくなんかないですよ!朱斗さんと居るのに!」 寂しさを隠すようにニコニコと笑った。 「そっか…。」 力になろうにも隠されるとどうにも出来ないか。とそれ以上は聞かなかった。 「朱斗さん…好きです。本気で。今日初めて一緒に仕事して思いました。あんな幸せな気持ちで撮影した事なくて、ずっとこの時間が続けばな…って。写真もすごく素敵で、もっと早く貴方に出会いたかった…。」 じっと俺を見つめて彼は言う。 嬉しい言葉だった。カメラマンにとって、相手にそんな事を思ってもらえるなんて幸せだ。 「ありがとう。そう思ってもらって嬉しい。」 目が合うと、彼は俺に近づき顔がだんだん近くなる。気づけば唇と唇が重なっていた…。 ちゅ…… キスをしてる。と、冷静に思った。 抵抗もなく、素直に相手を受け入れている自分に驚いた。 ちゅ……ちゅ…ちゅ… 何度も唇を離しては、まだ離れたくないと訴える様にまた重ねる。 求められてる。彼が俺を求めているんだ。 自然と腕が伸び、お互いに抱きしめ合っていた。 彼は俺を包み込む様に…。 俺は彼の気持ちに応える様に…。

ともだちにシェアしよう!