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負荷-huka-5

モデル以外にもテレビで活躍している芸能人や歌手も出てきてショーは終盤を迎える頃、急に暗転して、モニターに映像が流れる。 そこに映るのは俺の恋人だ。 film. Coming soon... 英語で書かれたその文字が映像から消えると、場内は明るくなり樹矢が再びランウェイに現れる。 「こんにちはー!瀬羅樹矢ですっ。突然すみません!」 彼はマイクを持ちながら手を振る大勢のファンに片手で振り返す。 「えーっと…。まず、今日は新作ファッションショーにお越し頂きありがとうございます!」 深々と頭を下げた後、代表して勝手に挨拶しちゃった!とニコっと笑うと場内も笑いの声が漏れる。彼らしい和ませ方だ。 「先程、映像が流れたと思うんですけども、ついに!僕の初めての写真集が発売される事が決まりました!」 観客から割れんばかりの拍手と歓声が起きる。 「本当にありがとうございます!応援してくれている皆さんのお陰です。ありがとう。」 「実はまだ、撮影は始まっていないんですけど、色々な事に挑戦しようと思ってるのでこれからの続報に期待していて下さい。」 「あ!撮ってくれるカメラマンさんは僕のファンにはお馴染みの須藤朱斗さんでーす!」 俺を手の平で指し示すと、沢山のライトに照らされた。前触れもなく自分の名前を呼ばれ、驚きと戸惑いの表情が樹矢越しに大きなモニターへと映るのが見えた。 樹矢程ではないが、歓声が耳に入る。 すると、隣に立っていた成田さんが距離を詰めてきた。 「瀬羅くんの元へ、行ってあげて下さい。」 そう言いながら俺の背中を軽く押し、足が一歩踏み出した。

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