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自慢-jiman-3
ガチャ。
二人の家の玄関の扉を開ける。
部屋の中は真っ暗で俺は一人。
一緒に帰れるって思ったのにな…。
おかえりもただいまも相手に言えないし言ってくれない。
温もりもない冷たい空気が流れるリビングへと重い足取りで移動する。
寂しさが込み上げて涙目になりながら、ソファに座って蹲った。
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ガチャ…。
遠くで扉を開ける音がした。
「ただいまーっ!!」
愛しい彼の声がする。
バタバタバタっ!
「あれ?しゆちゃん??」
足音がリビングに近づいて来て、ソファの空いているスペースに座る。どうやら、帰って来てそのまま俺は眠ってしまっていたらしい。
ぼーっとする頭を上げると、目の前にはドアップの樹矢の顔があった。
ちゅ。
驚くよりも先に優しくキスをされて自分の口元が緩んだのが分かった。
「ただいま。しゆちゃん。」
「おかえり。樹矢。」
会いたかった。と伝えるようギュッと抱きしめると分かっていたかのように、優しく包み込んで抱きしめ返してくれた。
「しゆちゃん、寂しかった?」
「……ん。」
「急にあの後、打ち合わせ入っちゃって…。ごめんね?」
一応メールはしたんだけど。と言われ、え?となる。
慌ててカバンの中を探りスマフォを取り出すと樹矢からのメール通知と着信も入っていた。
「あっ…。全然気付いてなかった…。」
「やっぱり。もーう、寂しがり屋さん!可愛いなぁ!」
樹矢は俺を後ろから再び抱きしめる。
「ねぇ、お腹空いた。しゆちゃんのお手製オムライス早く食べたい。」
「うん…。すぐ作る。」
ふわふわ卵のオムライス。特製のトマトソースを掛けて出来たてを二人で食べる。
「樹矢、頬張り過ぎだって。それに口元真っ赤。」
笑ってしまうほど大きな口を開けてもぐもぐ食べる姿が愛おしい。
彼といると自然に笑顔になれる。
「ずっと食べたかったんだもん!」
そう言ってまた頬張る。嬉しそうな笑みを溢して心が温かくなるのが分かった。
「ふふっ。ありがと。」
__________________俺の自慢の恋人さん。
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