132 / 227

ほろ苦-horoniga-2

「雑誌のインタビューでもそうだけど、なんで何度も何度も同じ事を書かないといけないのー!」 突っ伏していた顔を上げて、身体を反らし椅子の背もたれに掛かる。 天井を見上げて少し目を瞑る。 早く終わらせてしゆちゃんとイチャイチャしたい。 「…っよし!やるぞー!」 マグカップを手に取って、一口飲む。 温かい…。苦い美味しさが身体を巡る。 気合いを入れて、ペンを片手に取り掛かる。 「俺も仕事しよっと。」 しゆちゃんはパソコンを持ってきて、手を動かし始める。 それぞらお互いの仕事に取り掛かると、部屋の中は静かになり時計の針が指す音、ペンが紙を擦る音、キーボードを叩く音が響いていた。 ピタッと、アンケートに答えるために走らせていたペンが止まる。 しばらく考え込んで、自分にしか聞こえない声を出す。 (大嫌いな物はなんですか?) 「大嫌い…。」 ペンで机をコツコツと叩く。自分の大嫌いな物を思いつくよりも、自分を大嫌いと言った人の顔しか思い浮かばない。 ハッキリと、表情と共にその言葉を発する。昨日の事かのように鮮明に脳裏にこびりついている。 そこから仕舞い込んでいた過去が迫ってきて、心に靄が掛かる。誘うかの様な黒い渦が回っている。その中には、もう行きたくない。 俺はもう二度と、そこには行かない。 「や…?樹矢…?」 はっと耳に聞こえたのは恋人の声だ。 意識を目の前にすると、不安そうにこっちを見るしゆちゃんが写る。 「樹矢…?大丈夫か?」

ともだちにシェアしよう!