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ほろ苦-horoniga-2
「雑誌のインタビューでもそうだけど、なんで何度も何度も同じ事を書かないといけないのー!」
突っ伏していた顔を上げて、身体を反らし椅子の背もたれに掛かる。
天井を見上げて少し目を瞑る。
早く終わらせてしゆちゃんとイチャイチャしたい。
「…っよし!やるぞー!」
マグカップを手に取って、一口飲む。
温かい…。苦い美味しさが身体を巡る。
気合いを入れて、ペンを片手に取り掛かる。
「俺も仕事しよっと。」
しゆちゃんはパソコンを持ってきて、手を動かし始める。
それぞらお互いの仕事に取り掛かると、部屋の中は静かになり時計の針が指す音、ペンが紙を擦る音、キーボードを叩く音が響いていた。
ピタッと、アンケートに答えるために走らせていたペンが止まる。
しばらく考え込んで、自分にしか聞こえない声を出す。
(大嫌いな物はなんですか?)
「大嫌い…。」
ペンで机をコツコツと叩く。自分の大嫌いな物を思いつくよりも、自分を大嫌いと言った人の顔しか思い浮かばない。
ハッキリと、表情と共にその言葉を発する。昨日の事かのように鮮明に脳裏にこびりついている。
そこから仕舞い込んでいた過去が迫ってきて、心に靄が掛かる。誘うかの様な黒い渦が回っている。その中には、もう行きたくない。
俺はもう二度と、そこには行かない。
「や…?樹矢…?」
はっと耳に聞こえたのは恋人の声だ。
意識を目の前にすると、不安そうにこっちを見るしゆちゃんが写る。
「樹矢…?大丈夫か?」
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