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ほろ苦-horoniga-3

「う、うん!なんかボーッとしちゃってた!大丈夫大丈夫!」 「そっか。珍しくあんたが難しい顔してたからアンケートに解けないクイズでもあんのかと思ったわ。」 「クイズなんかあったらもうお手上げだよ。」 そう言い、いつもの笑顔を向けた。 ----- 「ねぇ、成田さんは大嫌いなものってある?」 「大嫌い…ですか?そうですねぇー。高い所ですかね。」 パッと出てくることに驚いたが、その答えが"俺"でなくて良かったという安堵感を得た。 「そっか。高所恐怖症だもんね?」 「そうなんですよ。どうしても克服出来そうになくて…。」 苦笑いしつつ、成田さんは話す。 「好きになりたいのになれなくて、大嫌いという言葉で突き放してしまうんですよね…。」 突き放す…。 確かにそうなのかもしれない。 過去に言われた場面を思い出すと、その時点からどんどん距離が遠くなっていき、何も無かったかのように離れて、相手も、相手から見た自分も自然と消えていった。 「なんか…答えが見つかった気がする。ありがとう、成田さん。」 「…?瀬羅くんのお役に立てたなら幸いです。」

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