136 / 227

悋気-rinki-2

「…っ!」 あまりの近さに驚いて、少し後ずさる。 「須藤さん?顔少し赤いですけど大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫です…。すみません。なんか、びっくりしちゃって…。」 しどろもどろになりながら、言葉を必死に選んで話す。 「ですよね?」 寂しそうに笑う彼女を見て、焦る。 「ぜ、全然偏見とか無いんで!本当に驚いただけなんです!」 だから、そんな顔を見せないで。と心で念じる。 「本当ですか?須藤さんにそう言ってもらって嬉しいです!」 にっこりと微笑むその表情を撮りたいと思わせる魅力が、彼にはある。 (本当に、綺麗だな…。) こんなに撮りたいと思わせる被写体は恋人の樹矢以外知らない。樹矢は樹矢の魅力がまだまだあるし、ずっと取り続けたいけれど、minaさんの女性らしい魅力は写真を通して未知数なくらい見出だせると思う。それをするのが、カメラマンの仕事。つまり俺の仕事だ。 ---- 打ち合わせを終え、すっかり夜になる。 夏になる前のこの期間は、まだ陽が差していて外は明るい。 打ち合わせ場所から出ようとエレベーターを待っていると、後ろから声を掛けられる。 「須藤さん。」 振り返っていたのはminaさんだった。 「須藤さん、この後のご予定はあるんですか?」 「あー…。予定と言うか、帰らないと。」 樹矢と一緒に食べるご飯を作らないといけない。 「そうなんですね。」 チンッと音がなると、目の前のエレベーターの扉が開き、二人で中に入る。

ともだちにシェアしよう!