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悋気-rinki-9
お互いに果てた後、これ以上車を汚さない為にさっと後始末を済ませて樹矢は運転席に、俺は助手席に座る。
「しゆちゃん…。好き…?」
シートベルトをしてハンドルに手を置いたから運転すると思いきや、いきなり俺に聞いてきた。
「何時も言ってんだろ。好きに決まってるじゃん。」
「…そっか。」
目を合わさず、前だけを見る。
「不安でもあんの?さっきはいきなり喰らいついてきてさ。」
樹矢は俺の事を大体分かるみたいだけど、俺はたまに自分の恋人の事が分からない。
普段は明るい元気な奴なのに、突然不安定になる。
過去の事からそうなっているのは理解しているけど、もっと信じてもらえるにはどうしたらいいんだろう。
「女の匂いがしたから。」
「………え?」
ぐるぐると考える俺に突然樹矢の言葉が突き刺す。
「香水と化粧の匂い。仄かにだけどしゆちゃんからした。」
(えーっと…。その原因はあの人しか居ないような…。)
「み、樹矢…。」
「何?別れないよ…?」
(そんなの俺だって別れねぇよ…。)
今感じている勘違いを紐解く。
「その匂い。多分minaさんのだ。」
「…。誰、そいつ。」
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