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燈火-touka-3

風で揺らめく光は、いつも見ている人工とは明らかに違う。 一度見た事がある筈なのに、この感動は繰り返されるんだと自分を不思議に思った。 「き、れい…。」 「ね。こんな景色見れるなんて。」 いつの間にか隣に立っていた樹矢が、俺の手を握る。この感動に気持ちが高まっているのか、ただ単に暑いのかは定かでは無いけれど掌の体温は高かった。 「近くに行きたい。」 目の前を見つめながら呟く。 「仰せのままに。」 優しく手を引いて歩き出す。 俺らの灯火を背に、沢山集まる灯りに向かって進んだ。 周りの人は皆、燈火に魅せられて俺らを見向きもしない。俺達も同じ様に見向きもせず、俺は被写体を収めるのに夢中になった。 何度か、樹矢とファインダー越しに目が合う。 その度に笑いかけ合って、幸せだと心が満たされる。きっと樹矢も同じなんだろう。 彼が、幸せと感じた瞬間に一緒に居るのが俺でありたいとずっと願っている。それは叶っても叶っても願い続ける。 俺と樹矢の関係が崩れない限り、それを強く思う。 『好き。』 シャッターのボタンを押して、ファインダーが閉じる度に、言葉にせず想い抱く。 俺達は、誰も邪魔する事はできないとこの燈火の花の火に祈ろう。 --- 大きさの違う隣にピッタリと並んで灯し終えた蝋は、溶けて繋がりお互いを支え合うようにその場にいた。 近くに他の蝋は無く、その2つだけの空間が出来ているようだ。 役目を終えてもなお、繋がり続けるのは未来の二人なのか。 --- -- -

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