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秋桜-cosmos-5

ベンチに座り待っている鶫の元へ戻る。待っている間何をするでもなく、鶫は何処かを見つめてぼーっとしていた。 「お待たせ。」 買ってきたソーダを差し出して、隣によいしょと腰掛けた。 「たまには、こうして少し旅みたいに足を運ぶのもいいよね。」 鶫が俺に話す。 「ホントはもっと色んな所に行って写真撮りたいんだけど、なかなか学生だと難しいんだよなぁ…。」 「そうだよね…。なら朱斗、卒業したらさ色んなところ行こうよ!色んな景色を見て、色んな写真を撮って、朱斗の思うままに旅しよう。僕は、付いていくよ。」 鶫は足を揺らして、上を見上げる。きっと、そこに見えたのは俺達の未来だろう。 夢であれ。夢になる。それを願う鶫の本心を少し聞けた気がして、もっと、もっと写真を頑張ろう。 首に掛けるカメラを見て、俺は思ったんだ。 「撮影、まだするんでしょ?始める?」 「おう。再開だ。」 二人で立ち上がって、撮る側と取られる側。当たり前のように分かれる。 陽が完全に落ちて、辺りはもう真っ暗だった。俺が望んだロケーションになった事で口元がニヤつく。 (来た…。待ってたぜ…。) カシャ…

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