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密か-hisoka-4
車に揺られてる間、俺は幼い頃の母親とのほんの僅かな記憶を思い出していた。まともに親らしい事をされた覚えは物心ついた時には無く、それは父親も同様だった。
精神が参っていたのか、元々そういう人だったのか全く分からない。父親もまともに家には帰って来る事が無く、いつ仕事をしていつ寝ていつ家を出たのか同じ屋根の下に居るはずなのに分からなかった。
とにかく自分自身は生きる事に必死で、俺が生きている意味は見出だせなかったけれども"死"という判断に至らなかったのは我ながら良かったと思う。
今は、しゆちゃんに出会えて、この人生が続いているから。
(母さんは、そんなに…幸せじゃなかったのかな。)
運命の人とかそんなロマンチックな話なんてどうでもいい。ただその人の為に生きたい。その人との人生を歩いて月日を重ね、思い出も沢山積み重ねたいと思えたんだ。老いて、朽ちる頃にはあんな事もあったね。なんて振り返れる様、時間が足りなくて話し終えれないからあの世でも笑い合って話そうって、それくらい永久に過ごしたいんだ。
(今は、何の為に生きてるんだろう。)
考えたくも無かった相手の事を振り返れば、拒絶反応よりも何故だろうと、理解出来ない疑問が現れる。
もう二度と来ない今日の時間を刻んでいる時計を見つめる。
(今日が終わる頃、俺は何をしてるかな。)
しゆちゃんをぎゅっと抱き締めて眠りたい。
目を瞑って小さく願う。
「瀬羅くん、着いたよ。」
「はーい。ありがと。」
車を降りて、打ち合わせへ向かう。とにかく仕事をこなそう。自分の事は今はどうでも良い。
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