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ネオン-neon-3
「ワイン、朱ちゃん飲めたっけ?」
「ん。少しなら大丈夫」
お洒落にワインなんて飲まず、普段はもっぱらビールか酎ハイな俺達。
「無理して飲まないでね!まぁ、酔っちゃっても俺が居るから大丈夫だけど」
出た。苦手なウインク。
綺麗な顔が崩れる瞬間、俺はいつも笑ってしまう。
「あ。樹矢あっち行こ」
今度は俺が樹矢を連れて行く。
木製の丸いハイテーブルにマグカップを2つ並べると、カメラを構えて腰を落とす。
パッとイメージした構図をレンズ越しに実現させ撮影した。照明は必要ない。背後に立つツリーがしっかりと輝きを放って明るく照らしてくれているから。
「ん。いい感じ」
直ぐに確認を済ませて、樹矢にマグカップを渡す。
「いただきまーす!」
両手でカップから伝わるワインの暖かさを感じるように包み、樹矢はその湯気立つ液体を啜る。
その姿を横目に、俺もワインを一口飲む。心まで冷たくなった身体にその熱はじんじんと沁みた。
「あったかいねぇ」
「な。しかも美味しい……」
もう一口。
スパイスが少し効いているからか、身体がぶわっと熱を持つ。
「朱ちゃん」
低い声で俺を呼べば、樹矢は人が行き交う通路側に背中を向けて、俺の前に立った。
輝くツリーは樹矢で、半分以上隠れてしまった。
「何?俺にツリー見せてくんねぇの?」
樹矢はチラリと俺をみて、何も答えない。
人の声が色々な所から聞こえるとはいえ、俺のさっきの質問は絶対に樹矢の耳に届いている。
(んだよ……)
少し苛ついて、ワインを勢い良く飲み干した。
喉に熱が次々に注がれる感覚が分かる。一気入ったアルコールで回る思考の回転が遅くなっていった。それに気づいた時はもう、遅くて。
「もう一杯……」
空のマグカップをそこに居る樹矢へと感覚的に手を伸ばして差し出す。次のアルコールを求めたのも口から不意に出てしまって、そこに自分の意識は持っていなかった。
「ねぇ樹矢」
俺の投げる言葉には、さっきから答えずに無言を貫く。目は、合っているはずなのに……。
マグカップを樹矢が受け取り、飲んでいた自分の分を渡す。覗いた中はまだ半分くらい入っていて、その湯気が俺の顔を更に高揚させた。
「これ、朱ちゃんが飲んでいいよ」
やっと答えた樹矢の顔を見ると、何だか嬉しそうなでも歯がゆそうな。なんとも言えない表情だった。
「いいのか?貰って」
「どうぞ。その代わり、それ飲んだらここから出るよ」
樹矢のマグカップに口付けて、飲み干そうとした時に言われた言葉にほんの一瞬動きが止まる。「え?」と理由を聞き出そうとした時には、もうその液体は俺の体内に入っていて手遅れだった。
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