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ネオン-neon-4
ふらふら、ふわふわ、ふよふよ……。
宙に浮いているみたいだけど、地に足はしっかりと着いている。この不思議な体感は一体なんだろう。足は着いているけど進む足取りは不規則で曲線を描くような道筋になっている気がする。
……それは俺が浮いているから?
「浮いてないよ。朱ちゃんは」
思っていた疑問に隣に居る……というよりは、俺の身体を支えてくれてる樹矢が答えた。
「お前は超能力者かよぉー」
何故だか伸びる語尾に可笑しくなってヘラヘラと笑ってしまう。
「ほら、朱ちゃん。もうすぐそこだし、おんぶしてあげるから、おいで」
樹矢の背中に有無を言わさずに、乗せられて今度こそ俺は宙に浮いた。
何処に向かっているのか、今俺達は何処にいるのか視界がボヤケて分からない。地に着くことができない足に、不安は無い。そこに樹矢が居るから。
「んー。みぃくん……」
相手に預けるだけの自分の身体が、安心に任せたことで急に重たく感じ目を閉じてしまう。
ふわふわ……。俺は浮いている。
―――
「んっ……っ、ん……」
瞼が重たい。ベッドの上で俺は眠っているのは、手に触れたシーツで理解した。ただ、何時も家で触っている感覚と違う。ベッドのスプリングもいつも以上にバネが柔らかい気がする……。
身体で感じる感触しか分からず、俺は細い糸で繋がっていた意識をプツンと手放そうとした。
「っは、朱……っし、ゆ!」
愛する恋人の喘ぐ声が鼓膜を震わせる。それは脳内を物凄いスピードで駆け巡り、俺は目を大きく開いた。
「……え、っ」
真っ暗でも分かる見慣れない天井に照明、いや空間そのものが初めての場所だ。そして、俺に跨がる樹矢の裸体。何も身に着けず、腰を振り快感を感じている主体は俺のナカ。
「ぁ、朱っ……イク、イクよ……っぅ!」
全てを理解した時は、俺のナカに樹矢の精液がドロリと注がれていた。抜かれた樹矢のモノはまだその硬さを保っていて、表情も何か不満気でイキ足りていない様子だった。
「み、樹矢……?」
「朱ちゃん!やっと起きた……!もう、酔い潰れちゃって心配したんだよー!」
「いや、え…?この状況……。心配している奴がする行為じゃないだろ」
「寝ているとこ襲うなんて駄目だって思ったんだよ?我慢は一応したよ?」
俺のナカにある精液を指で掻き出しながら、樹矢は話を続ける。
「あんなにペロペロに酔った朱ちゃんが可愛すぎてね。いや、本当に可愛くて、俺以外の誰にも見て欲しくなくて、見て欲しくないって思うと朱ちゃんは俺だけを見て!って思っちゃって」
「っん…寝込みを襲ったっ……と」
「ま、まぁ、そういうこと!」
樹矢はテヘッと語尾に星でも付きそうな勢いで返事をする。
「よし、綺麗になったよ。あとはお風呂行こう」
手を差し出す樹矢に答えると、ひょいと身体を持ち上げられる。
「で、ここは何処なんだよ」
「ん?最近都内に出来た外資系ホテルのスイートルーム!」
嬉しそうに話す樹矢の連れて行った先は、透け透けのガラスに覆われたシャワールームだった。
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