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ネオン-neon-5
「いや、透けすぎだし床も大理石って……」
今まで泊まったホテルの中でも飛び抜けた高級感に俺は後ずさってしまう。
よく周りを見渡せば、高く大きな窓が並びその夜景は街の景色を思う存分上から一望できた。
無駄に広い部屋にこれまた高価なんだろうソファが並んでいて、一泊の値段を想像したらゾッとした。
「ほーら。朱ちゃんおいでー」
俺を呼ぶ声に振り向くと、いつの間にか泡風呂に気持ちよさそうに入っている樹矢の姿。楽しそうに手の平に泡を乗せてはふぅと息を飛ばして遊んでいる。
「お前、楽しそうだな」
シャワーからお湯を出し、身体を濡らす。
「家では泡風呂なんてしないからねー」
「まぁ、な」
そのまま樹矢の元へ行き、何も言わず彼の股の間にひざをたてて座り胸元に自分の背中を預けた。すると、当然のように樹矢の長い腕が俺を優しく包んでくれる。
「気持ちいいね。お風呂」
「あぁ。良いな」
お湯に浮かぶ沢山の泡を樹矢は集めて、浸かっていない素肌が見えている部分にモコモコの泡を纏わせていく。首から上以外の肌が隠れた俺に満足したのか、また優しく樹矢は俺を包んだ。
「見えないのに触れるって、興奮する……」
耳元で小さく樹矢は言った。背中に感じる樹矢の体温はお風呂のせいなのか、それ以外のせいなのか熱を持って高く感じた。
俺の身体を引き寄せて更に密着した肌と肌に、何時もの家とは空間も流れる空気も違うからか俺は恥ずかしさを覚える。
「樹矢……近いよ」
言葉で少しの反抗をしてみた。
それは樹矢が受け取ると反抗なんかじゃなく、何故か誘いに変わる。
「もっと近くに居させて」
落ち着いたトーンで紡ぐ言葉は、俺にしか言わない。いや、俺以外に言えない。
頬に樹矢の顔が密着して、泡まみれの俺をぎゅっと力強く抱き締めた。
「甘えてんのか?」
「んー?いつも甘えてるよ。俺の朱ちゃんは可愛いくてツンツンだからねー」
「意味わかんねーよ」
そう言って見た樹矢の鼻には白い泡がちょんとついていた。
「ついてんぞ」
指先でそれを優しく取れば、目が合ってそのままキスされる。
深くて、深くて、溺れそうなほどの愛情が流れ込んでくる。俺は樹矢の両頬を包み込んで、受け入れる。樹矢の右手は俺の頭を、左手で俺の腰を支えてくれている。
水音が響く浴槽に興奮して、止まらない。
窓の外は暗闇。その中で美しく光り輝くネオン達は今日の仕事を終えて徐々に消えていく。俺達が見ていた輝きが無くなっても、俺達は二人だけの消えない愛を育んでいく。
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