43 / 93

掴まれた手。

後ろから、松木君の声が聞こえる。 「わ!1年の松木君!?イケメンばっかりじゃん!愛美嬉しい!!」 圭人の隣で彼女が嬉しそうに声を上げた。 「太一郎!!」 そして、焦ったような怒気を含んだ武藤萌乃ちゃんの声もした。 その声に体が無意識に震える。 「...悪い、愛美。また連絡するわ」 「え?...えぇー?2人ともどこ行くのぉ?」 いきなり、圭人に腕を掴まれて半ば引きずられるように歩き出す。 「ちょっ、圭人?」 「先輩!!」 歩き出した俺の、圭人に掴まれていない方の手を松木君が掴んだ。 「わっ!?...松木君」 「先輩」 松木君と目が合う。哀しそうな、今にも泣きそうな顔をしている。 「もぅ!太一郎っ!!」 松木君の後ろから武藤萌乃ちゃんが現れて、松木君の腕を掴んだ。俺を睨んだまま。その視線に耐えれなくて俯いた。 「...手。離せよ」 圭人の低い声。威嚇するような。 「嫌です!...尾関先輩こそ、離して下さい」 瞬間、俺の手を握る松木君の力が強くなった。 「太一郎!!」 武藤萌乃ちゃんのキンキンとした声が辺りに響く。 「行こうよ?先輩たち 話があるみたいだし、あたし達邪魔だよ?」 武藤萌乃ちゃんの言葉に、圭人の顔が意地悪に歪んで笑う。 「ほら。言われてんぞ。早く向こう行って仲良しごっこしてこいよ」 バカにした言い方にさすがに眉間に皺が寄ってしまう。 「...圭人!」 「...ちっ」 拗ねた子供のように俺から目を逸らす圭人の 俺の腕を掴んでいる腕を掴む。

ともだちにシェアしよう!