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成長していません。

笑顔を絶やさずに。 無理はしない。 不自然にならないように。 表面上は何も変わっていないように。 いつも通り、いつも通り。...それなのに視界に松木君が入ると無意識のうちに避けてしまう。 元々、学年も違うし意識して避ければ接点なんてすぐ無くなる。そのまま、フェードアウトしてもおかしくない...はず。今回はLINEにもなるべく返信していない。前にも同じような事をしたな、と思うと成長しない自分に嫌気が指した。 松木君を避けるようになって、武藤萌乃ちゃんがよく松木君の隣にいるのを目にする。とっさに隠れるけど、俺を見ると鋭い視線でこっちを睨んでくる。 ...分かっている。近づかない。 諦めにも似た感情に、飲み込まれる。 今日もまた松木君と武藤萌乃ちゃんの姿を見つけ、松木君に気づかれる前に武藤萌乃ちゃんに睨まれて俺は方向転換した。 「わっ!...何やってんの?」 「...っ!!」 いきなりの方向転換に、後ろをよく確認していなかった俺は人にぶつかる。 「...圭人」 あの日以来久しぶりに見た圭人。 隣には、可愛い女の子がいた。 「...ごめん、よく、見てなかった」 思わず、目を逸らして俯いてしまう。 「...や、大丈夫だから」 「あ!3組の矢作君だ!」 圭人の隣の女の子が俺を見て、大声を出した。 「...?あの、?」 どうやら俺の事を知っているようだ。見覚えが無く、俺は首を傾げる。 「やー!近くで見るとほんと可愛い!!あたし話してみたかったんだよね、矢作君と!圭人、友達だったの?」 大声を出す彼女、よりも松木君たちに気づかれていないか、そこばかり気にしてしまう。 思わず目線をうつすと、松木君がこっちを見ていた。慌てて背ける。 「お前、声デカイ」 「えー?そぉ?だって矢作君とお喋りできるってテンション上がるよ?」 圭人は困ったように頭をかいてため息ついた。 「ほんと、ごめんな。じゃぁー...」 「先輩!!」 早口で圭人に謝罪を述べ、立ち去ろうとすでに向きを変えた体に松木君の声が追いかけてくる。

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