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I fall in love:落ちてたまるか!

 すったもんだで、やっと1日が終わる。  今日は、塾に行くのやめよ……正直かなり疲れてるし、両親に警察官の話もしなきゃならない。  理由なく警察官になってみたいんだと言ったら、間違いなく反対されるだろう。  肩を落としてトボトボ歩いてると、軽く人にぶつかってしまった。 「すみません……」  言いながら、肩から落ちた鞄をかけ直しつつ顔を上げると、そこに水野がいて驚くしかない。  意外な人物の登場に、声を出せずいると。 「あれからバタバタしちゃって、連絡先……渡してなかったから」  そう言って背広のポケットから、名刺を手渡してくれた。 「仕事、大丈夫なのか? こんなトコで油売ってたら、またデカ長さんに怒鳴られるぞ?」  俺が心配して言ってるのに、余裕そうにクスッと笑う。 「ちゃんと許可、もらってるから大丈夫。それにきちんと、連絡先を渡しておかないと困るだろ、翼がさ。マメじゃない男だから、苦労するぞと出掛けに、デカ長から言われた」  あんのクソ親父、余計なことを言いやがって―― 「会いたかったから、俺……」 「朝から、一緒だったろ?」 「だから尚更、会いたかったんだって。この分らず屋」  どっちが分らず屋だよ、まったく。  俺は呆れ顔で、水野を見上げた。 「ツンが返事くれなくてもいい。受験生だし、いろいろ忙しいの分かってるから」 「忙しいのは、お互い様だろ。無理すんなよな」 「出来るだけ会えるよう、時間を作るから」 「時間を作ろうとして、無理するなよ。体壊したら、おじゃんだし」 「そうだね、それこそ会えなくなっちゃうもんな。ありがとう翼」  嬉しそうな顔して俺を見てから、腕時計で時間の確認をする。 「タイムリミット5分前。それじゃ連絡、待ってるから」  踵を返して走り出す背中に思わず、手を伸ばして捕まえてしまった。 「あ……」 「どうした?」 「えっとその……わざわざ、ありがとうな。嬉しかった……」  語尾がすごく小さくなったので、水野に届いたかどうかは分からない。だけどアイツは、俺の頭をクシャクシャと乱暴に撫でて、何も言わず走って行ってしまった。  会いたかったから俺って……俺だって同じなんだ、絶対に言ってやんないけどな。    苦笑いしながら歩き出し、手持無沙汰だったので、渡された名刺見ながら、水野のアドレスをスマホに打ち込んだ。  打ち込んだその手で、早速メールを作成。文面は、仕事頑張れよ。  ため息一つついて、送信ボタンを押してから、ポケットにスマホを仕舞った途端に、ぶるぶると震え出す。 (おいおい、もう返事が着たのかよ。早過ぎんだろ)  呆れながら、受信トレイからそれを見た俺は、立ち止まってしまった。  すれ違うOL2人組が俺の顔を見てから、クスクス笑って通り過ぎて行く。 「ちょっと、今の高校生可愛かったね~。顔、真っ赤にしてさ」 「イケメンだったから、アプリかメールで愛の告白でもされたんだよ。きっと」  公衆の面前で、俺に恥をかかせたな。水野……何なんだよ。初めてのメールで、打つ文面じゃないよ、コレは! 『愛してる翼(*´∇`*)』  しばしそれを見つめてから、しっかり保護して、返事を手身近に打ち込んでからポケットに仕舞った。  ニヤけるのを押さえつつ、家路に急ぐ。間違いなく、変顔になってるに違いない。  おねだり上手な水野に、しっかり飼い慣らされてる気がする。超ムカつくなぁ。  変顔を見られないよう、ダッシュして家路を急いだ。  さっきの返事に、水野はどんな顔をしているだろうか? 容易に想像つくのは、俺だけだろうな。 【落としてみせる】につづく

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