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I fall in love:落としてみせる!②
***
俺は歩道を走りながら、すれ違う高校生の顔を素早く確認していく。何人くらい確認しただろうか。
もうダメかなと内心諦めかけたとき、前方に肩を落として、しょんぼりしながら歩く翼を発見した。
(……良かった、間に合った)
安堵のため息をつき、その場に立ち止まる。翼は俯いたまま、俺に向かって歩いて来た。肩が軽くトンとぶつかる嬉しい衝撃に、口元が緩んでしまう。
「すみません……」
肩から落ちた鞄をかけ直すべく顔を上げた翼と、しっかり目が合った。何でここにいるんだという、驚きの表情で目を見開き俺を見る。
「あれからバタバタしちゃって、連絡先……渡してなかったから」
用意していた名刺をポケットから取り出し、そっと手渡す。それを大事そうに、両手で受け取ってくれた。
「仕事、大丈夫なのか? こんなトコで油売ってたら、またデカ長さんに怒鳴られるぞ?」
「ちゃんと、許可をもらってるから大丈夫。それにきちんと、連絡先渡しておかないと困るだろ、翼がさ。マメじゃない男だから苦労するぞと、出掛けにデカ長から言われた」
俺の心配をしてくれる翼の姿に、嬉しく笑いが止まらない。
「会いたかったから、俺……」
「朝から、一緒だったろ?」
「だから尚更、会いたかったんだって。この分らず屋」
会いたい気持ちで俺は、ずっと君に囚われてるんだよ。嫌いばかり言う素直じゃない、分からず屋なところも、しっかりと把握しているけどね。
そんな翼が、俺は好きなんだ――
俺が目を細めて見つめると、呆れ顔した翼が、じと目で見上げてきた。むぅ、気持ちを伝えすぎてしまったかな?
「ツンが返事、くれなくてもいい。受験生だし、いろいろ忙しいの分かってるから」
「忙しいのは、お互い様だろ。無理すんなよな……」
ツンツンしつつも、しっかり俺の心配をしてくれる。俺はその気持ちに、なるべく多く応えたいって思うんだ。
「出来るだけ会えるよう、時間を作るから」
「時間作ろうとして、無理するなよ。体壊したら、おじゃんだし」
「そうだね、それこそ会えなくなっちゃうもんな。ありがとう、翼」
ぶっきらぼうだからこそ、その優しさにジーンとくるんだよね。ホント可愛すぎる……ってそろそろ時間か!?
左袖を捲って、しぶしぶ腕時計で時間を確認した。
「タイムリミット5分前。それじゃ連絡、待ってるから」
一方的に、俺から連絡しちゃうかも。
そう思いながら振り返り、一歩足を前に出した瞬間、ぐいっと背中を掴む手に、動きを止められる。
「あ……」
「どうした?」
「えっとその……わざわざ、ありがとうな。嬉しかった……」
耳まで赤くして、俯きながらお礼を言ってくれる。抱きしめたい衝動をぐっと抑え、翼の頭をクシャクシャと撫でてから、振り切るように駆け出した。
絶妙なタイミングで、アメを投げてよこすんだからっ! 翻弄されまくりだよ、俺ってば。
頭を掻きむしり苦悩しながら走っていると、スマホが突如震えだす。立ち止り、メールの受信トレイを確認してみた。
知らないアドレスだったけどアドレスの中の(wing)という綴りと、文面の『仕事頑張れよ』という素っ気ないモノで、相手が翼だとすぐに分かった。
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