26 / 64
I fall in love:落としてみせる!
「いやぁ、事件解決おめでとうさん。呆気なかったね、被疑者が教頭なんて」
向かい側に座る上田先輩が、とても嬉しそうに声をかけてくれた。
「そうですね。早く解決して良かったです」
事件の書類を纏めるべく、デスクで整理をしながら、コーヒーを一口飲む。
「でもミズノンとしては、残念だったんじゃない? これから、好きなコに会えなくなるんだからさ」
その台詞に飲んでたコーヒーを、思いっきり吹き出しそうになる。慌てふためき、目を白黒させる俺の顔を見て、
「だって、この間のデカ長の発言を考えると、ミズノンの好きなコって高校生だろ?」
「そうなのか? 水野……」
上田先輩の隣にいる、土井さんまで話に加わってきた。しかも、憐れむような顔してるし。何か心中複雑――
「一筋縄ではいかない未成年が相手なんて、顔に似合わず、お前ってすごいよな」
「あの、えっと……」
何だよ、顔に似合わずって。下手に弁解すると、ややこしくなりそうな感、満載じゃないか。
「面食いのミズノンのことだ、髪が長くて綺麗なお嬢様系のコなんだろ? 俺のプロファイリングから、推測したんだけどさ」
何故そこに、プロファイリング使うんだ? 確かに翼は整った顔立ちをしていて、適度に綺麗系だよ。しかもあのワガママぶりは、一人っ子のお坊ちゃまとみた。
あながち間違ってないトコが、何気にすごいぞ上田先輩。まるで仕事の出来る刑事みたい。
「でも未成年は、ちょっとヤバいっすよね。土井さん」
「水野、あと数年すれば20歳になる。バレないように、コッソリ頑張れ」
上田先輩の言葉をスルーして、何故だか土井さんは、親指立てて応援してくれた。
「ドジばかりやらかす、お前さんのことだ。連絡先交換なんて、やっていないだろう?」
またしても音もなく、俺の横を通り過ぎるデカ長。
「あ……!」
(しまった! そういえば、何も渡してないよ俺)
「向こうさん、マメじゃないと自分で言ってたからな。このまま何もしなかったら、それで終わりだろうなぁ」
その言葉を聞きながら、慌てて腕時計を見る。そろそろ下校の時間だ。
「デカ長すみません! 俺に20分だけでいいので、時間を下さいっ」
「帰ってきたら、倍の仕事をやってもらうからな」
そう言って俺の背中を、バシンと遠慮なく叩いた。よし、気合いが勝手にチャージされたぞ。
「喜んでやらせていただきます。行ってきます!」
心と体に気合いの入った俺は、急いで翼の通う学校へ猛ダッシュした。君へ会いたい気持ちに、囚われていたから――
ともだちにシェアしよう!