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I fall in love:落としてみせる!⑬

***  山上先輩のお墓参りに、ふたりで並んで歩いている。何か不思議な気分だった。    途中立ち寄った花屋で翼は、真っ白なバラを買ったのだけれど――白いバラを持つその姿は、とても様になっていて格好良かった。まるで、どこかの王子様みたいだ。 「ねえツン、どうして白いバラなんて買ったの?」    ドキドキする胸を抱え、見惚れながら訊ねてみる。俺の視線を受けてから、気まずそうな顔して、あさっての方を向く翼。 「俺が見た山上のイメージが、これだったから……」  その台詞に、俺は首を傾げた。いつ見たというのだろう――? 「お前ん家で受験勉強してるとき、水野が寝てるのをいいことに、ちょこっと持ち物チェック、しちまった。メモ帳に挟まれた写真、見たんだ――」 「あ……」 「俺の写真があったのも、かなりビックリだったけどさ、しっかり山上の写真もあって、ちょっと妬いたんだぞ」    言いながら、軽く体当たりをする。ちょっと当たっただけなのに、グラリと体が揺れてしまった。  ――かなり気まずい。 「えっと、あの……」  上手く言葉が出てこない。何と言っていいのやら……  ……写真を持っていた。今彼と元彼を合わせて、隠していたということをしていたので、何と弁解していいのか、言葉が見つからない。 「山上、すげぇカッコイイのな。どこが目もと似てるんだ、嘘つき水野」  写真を隠し持っていた事実を責めず、違うことを言って俺を責める。 「その…ごめん……」  俺は俯いて、謝ることしか出来なかった。  そんな俺に白いバラを手渡して、持っていたお墓参り用のひしゃくと桶を奪い取る。 「そんな顔してると、山上に嫌われるぞ。早く案内しろよな」  そう言って、桶に入れた水をひしゃくに取り、俺にかけようとする仕草をした。  翼に気を遣わせてしまってる。参ったな…… 「ツンの脅迫の仕方、子供じみてて笑える。ちゃんと案内するから水、かけないでよ」  肩を竦めて苦笑いすると、俺の左腕に自分の右腕を絡めた。  何か、山上先輩に見せつけるみたいだって思ったのは、俺だけなのかな。甘い雰囲気に酔いしれて、仲良く歩く俺たち。  しかし山上家の墓前に着いた途端、翼はいそいそと腕まくりをした。 「いいか、水野。お前は一切手伝うな。墓の掃除は俺が全部、一人でやるから」  言い終わらない内に、ひしゃくの水をお墓に向かって、ジャバジャバとかけていく。 「ツン、俺も何かやりたいんだけど……」  せっかく久しぶりに、山上先輩のお墓に来たというのに、何も出来ないのは正直辛い。 「だったら、そこら辺の草でも、むしっとけ」  鬼気迫る勢いで、お墓をゴシゴシ擦りながら言う。気合の入れ方、半端ないんですけど。    手持無沙汰だったので、しょうがなく草むしりをした俺。  お墓参りがしたい件といい、今の掃除といい、一体翼はどうしたんだろう?  ちまちま草を、むしりながら考えていると、 「よしっ! 終わった……」  そう言って、白いバラを花立てに供える。  ふたりして手を洗ってから、ろうそくに火を灯し線香を立てて、改めて墓前と向き合った。

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