この春から志望していた医科大学附属高等学校に入学予定。 ちょっと外見にコンプレックスを持つ僕、楠木昴治は、学生寮に住む為の手続きと荷物の整理に寮へと来ていた。 今日から荷物の運搬が可能になったので他にも生徒はちらほら見える。 作業は私服でも良かったけど、男子寮だから僕の見た目が性別を惑わせてしまったらいけないと思って制服を着て来た。 寮は2人で一室を使う仕様になっている。 どんなルームメイトが来るのかまだ分からない。 親友のたくみが同室だったら1番良いけど、 部屋割りは学校がランダムに決めるから… 本当は1人部屋の寮が良かったんだけど、学校から近くて、設備も整っていて食堂も併設されている寮はこの琥珀寮しか無かったためここに決めた。 2人で一部屋と言っても内部はマンション並、各々に部屋があるし、共有スペースをシェアするくらいだから、ルームメイトとは、それなりに仲良くして三年間過ごせたらいいかな。 出来るだけ目立たず三年間静かな学生生活を送っていけたらって思ってたけれど、まさかこんな奴がルームメイトになるなんて… 自分の部屋を片付けていたところに、玄関から声が聞こえて、様子を見に部屋から顔を覗かせると、玄関に長身の人物が… 様子をうかがっていると、その人物は玄関外の誰かと会話しているようで、なかなかの低音ボイスだ。 話を終えて振り返り、玄関から入ってくる長身男は、顔もなかなかのイケメン。 そいつは僕に気づいて驚いたように話しかけてくる。 「え？お前誰？誰かの妹？ここ男子寮だから入ったらマズくね？」 「……」 いきなり失礼な勘違いをされてしまう。 「あの、僕はこの部屋に住む予定の楠木です、貴方は？」 ムカつきながらも、自分は見た目が女の子っぽく見えてしまうから、この手のことはよくあることなのでぐっと堪えて説明すると… 「え？僕？…男？」 「そうです！」 学生服着てるだろ！！って突っ込みたくなるがなんとか我慢する。 「あー、じゃ生徒なんだ？一年？」 改めてまじまじ、僕の姿を見てまた質問。 「はい、今年入学です」 「あ、じゃ敬語いいよ、俺も一年だから」 「一年？」 にしてはデカイ。 「ついでにルームメイトだから、えーと、幸田瞬助、よろしく！」 そう握手を求めてくる。 「あ、よろしく」 一応握手に答え、挨拶する。 この人がルームメイトか… なんだか目立ちそうでやだな。 「なんか、小さくて可愛いから女子かと思った、悪りぃ悪りぃ」 頭を書きながらそんなことを言ってくる。 なんだのこコンプレックス無遠慮に押しまくるイケメンは。 「……」 極力関わらないようにしよう。 ムッとしながら、そう心に決めた、次の瞬間、大きな手に頭を撫でられる。 「えー、でもマジこんな男子いるんだなぁ」 「ちょっと、」 慌てて怒ると… 「あ、悪り、つい！今日は部屋の感じを見に来ただけだから、またな！」 そう、嵐のように去っていく幸田瞬助。 思わぬ形で同室者を知ることになった。 何やら癖のありそうな奴で… 静かな学生生活に暗雲が立ち込めたのだった。